KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年11月号
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(ヒッグス粒子)が芸能人の方だけに群がり「質量を与える」ことで、両者は「別もの」となった、ということです。パーティー会場(宇宙)にヒッグス粒子が現われる、つまりヒッグス粒子が誕生する瞬間が、この「弱い力と電磁力が分かれる相転移」の瞬間なのです。エネルギーとしてのみ存在した(正確にはヒッグス場として存在した)ヒッグスが、粒子として姿を現わしたために起こった相転移です。第14回の例で言うと、水蒸気が水滴になったとたんに我々に観測されるようなものです。このヒッグス粒子は、永らく理論上のものでしたが、二〇一二年に、人類最大の加速器LHC(LargeHadronCollider)を用いた実験によって発見されました。ピーター=ヒッグスは翌二〇一三年にノーベル物理学賞を受賞しました。このようないくつかの相転移によって、ひとつだった力から、まず重力が分かれ、次に強い力が分かれ、そして弱い力と電磁力が分かれたのです。るのでしょうか。そう、お客さんたちが入ってきます。お客さんたちは、ゲストを見ると、芸能人の方のほうに群がり、次々に話しかけることでしょう。サインを求めたりもするでしょう。するとその芸能人の方は、お客さんたちの相手に追われ、自由に動き回れなくなります。食事をすることも、トイレに行くこともできなくなります。「動きにくくなった」、つまり、「質量を獲得した」のです。一方、僕に話しかけるお客さんは誰もいませんから、僕はパーティーが始まろうが始まるまいが、同じように自由に動き回れます。つまり、「質量はないまま」です。このときのお客さん、ゲスト(粒子)を選別して一方だけにまとわりついて「動きにくくする」、言い換えれば「質量を与える」ものが、ヒッグス粒子です。まとめると、パーティーが始まる(相転移)前までは、芸能人の方(ウィークボゾン)と僕(光子)に区別がなかったのに、パーティーが始まると、お客さんこのことを頭に入れてもらった上で、粒子が質量を獲得するための機構、ヒッグス機構というものを説明しましょう。この名前は、これを考え出した物理学者ピーター=ウェア=ヒッグスから採られています。この機構の要となるのはヒッグス粒子です。このヒッグス粒子がどのように働くのかを考えるために、次のようなたとえ話を挙げてみましょう。ここに、パーティー会場を考えます。パーティー会場には、すでにゲストがいることとします。かんたんにするためにゲストは二人とします。一人は有名な芸能人とし、もう一人は僕としましょう。パーティーが始まる前は、この二人に差はありません。芸能人の方も、僕も、どちらも、自由に動き回って、料理を食べたり(パーティー前に食べるのもあれですが)、トイレに行ったり、好き勝手にできます。ここでは両者とも「質量がない」状態です。そしてあるとき、会場に相転移が起きます。パーティーが始まるのです。するとなにが変わ59

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