KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年11月号
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多田先生!素粒子物理学者の     宇宙物理学教室教えて 自然界で最も大きな存在が宇宙、そして最も小さな存在が素粒子と考えられている。素粒子を研究することで、宇宙のはじまり、人間の存在を解明する︱︱ 日本の誇りをかけて、その最前線で日々研究に打ち込む素粒子物理学者・多田将先生。この連載で謎に包まれた宇宙について多田先生に教えていただきます。さあ、授業のはじまりです!前回は、もともとひとつだった力が、宇宙の相転移にともなって別の力に分かれていったという話をしました。たとえば、電弱力とも言うべき力が、電磁力と弱い力に分かれていったように。分かれる前は同じ力だったのが、別の力となったのは、言い換えれば、両力の媒介粒子が、ある時期までは区別がつかなかったのに、その時期を境にまったく別の粒子として認識されるようになった、ということです。媒介粒子は、電磁力は光子、弱い力はウィークボゾンで、両者は質量からしてまるで違います。前者は質量がないのに対して、後者は巨大な質量を持ちます。相転移が起こったときにこの違いが生まれたということは、その瞬間に、ウィークボゾンにだけ質量を与えるような「なにか」が起こったことを意味します。今回はその「なにか」についてお話しします。そもそも「質量とはなにか」と問われれば、みなさんならどう答えるでしょうか。質量には重力質量と慣性質量とがありますが、後者のほうであれば、それは「動きにくさ」の指標です。「重い(質量の大きな)ものほど動きにくい」を定量的に表わすものです。みなさんが中高生のころに習った運動方程式は、これを式で表わしたものです。「質量がないものが質量を獲得した」ということは、つまり、「それまで自由に動き回れていたものが、急に動きにくくなった」ということを意味しています。連載〜第17回〜 質量を与えるメカニズムPROFILE多田 将 (ただ しょう)1970年、大阪府生まれ。京都大学理学研究科博士課程修了。理学博士。京都大学化学研究所非常勤講師を経て、現在、高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所、准教授。加速器を用いたニュートリノの研究を行う。著書に『すごい実験 高校生にもわかる素粒子物理の最前線』『すごい宇宙講義』『宇宙のはじまり』『ミリタリーテクノロジーの物理学〈核兵器〉』『ニュートリノ もっとも身近で、もっとも謎の物質』(すべてイースト・プレス)がある。58

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