劇団スーパー・エキセントリック・シアターが創立45周年を迎える。アクション、ダンス、歌、笑いをふんだんに取り入れながら、社会に警鐘を提示する作風は変わることなく、本公演では1960年代の音楽と学生運動をテーマに当時の若者の姿を描く。座長の三宅裕司さんに公演の見どころを聞いた。─45周年、振り返っていかがですか。よくここまで続いたなと思います。創立メンバーが支えてくれたからこそです。小倉の存在も大きかった。小倉と出会ったことで劇団がおもしろくなりました。─今回の公演について教えてください。1960年代に流行ったアメリカン・カヴァー・ポップスをテーマにしたいと、昔から思っていました。自ら詞を訳し、次々とヒットさせた漣健児さんを描きたかった。それと同時代の出来事として学生運動があります。かたや、アメリカの音楽が好きでそれを日本に広めた人、かたやアメリカのいう通りにはしないぞと安保反対と言って運動していた人。2人が対立したらおもしろいな。そこに女性が出てきて恋愛を絡めたらもっとおもしろいかなと思いました。─見どころは?60年代の音楽です。『ルイジアナ・ママ』『可愛いベイビー』『ヴァケイション』。当時流行った僕も大好きな曲ばかり。歌とダンスの中に、機動隊のアクションが入ります。そして笑い。爆笑の連続になるといいですね。さらに神戸公演には浅野ゆう子さんが出演します。僕のラジオの生放送に現れて「私も出ます!」と宣言されたので、大急ぎで台本を書き換えました(笑)─三宅さんにとっての60年代とは?高度成長期だったので、小中高とずっと楽しかったですよ。冷蔵庫買ったとかクーラー買ったとか、テレビを近所の人が見に来たりとか。三丁目の夕日状態(笑)。ベンチャーズが来てビートルズが来て。次から次へ新しいものが来ましたからね。失敗しても大丈夫、またすぐに立ち直れる、と思えた。だから楽しかったです。─昭和から令和。表現に変化はありますか。それは変わらないですが、今回の舞台は日本のことを真剣に考えていた学生が立ち上がった時代。今の学生さんはどれだけ考えているだろう、何かあったら立ち上がるんだろうか。立ち上がる勇気はあるのかと問うつもりでした。でも状況が全然違います。あの時代は携帯もインターネットもなかった。意見は人が集まって主張するしかなかった。今は意見をすぐに言える。社会に不満があったらみんなで立ち上がらなくても主張できます。そんなことを考え、数日前にラストシーンを書き換えました。─最後に読者にメッセージを。団塊の世代には懐かしい音楽ばかりです。笑って、楽しんで、最後に日本のこれからをちょっと考える、そんな芝居です。見てくれた人の心に何か残ればいいなと思っています。text. 田中奈都子39
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