KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年11月号
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が、それを現代に合う形で活性化していくのもひとつの方向性かもしれません。─神戸芸術工科大学の学長に就任したいきさつは。松村 そもそもこの神戸芸工大は、建築という僕らの分野を含んでいる大学です。学長は僕で6代目なんですけれど、初代から3代目は東大の建築の大先輩たちで、僕と馴染みの深い方々が力を注いできた、関西では珍しい大学なんです。ふるさとですから帰ってきたいという思いももちろんありましたけど、それが一番大きな理由ですかね。─神戸芸工大の特徴は。松村 初代学長の**吉武泰やすみ水先生が提唱した芸術工学というのがひとつの特徴です。アートやデザインをやる人も当然ながらいろいろなテクノロジーを使う訳で、コンピュテーショナルデザインとかモデリングとか最先端の技術が表現の可能性を拡げていくこともあるので、芸術的な分野と工学が結びつくのは一つの強みになります。一方で工学に目を向けると、エンジニアは社会の課題に応えるという意識が強いんですね。人間の感性の中から湧き上がって個人の内面の世界から来る芸術と、社会という自己の外の問題を技術で解決しようという工学が、それぞれ勝手にやっていたらうまくいかない時代に入ってきています。ここから芸術と工学、両方がわかる人が育っていくことは大事なことだと思います。あと、マンガも映画も、建築もファッションも、陶芸もジュエリーも、イラストもグラフィックデザインもいろいろとやっていて、簡単に領域を越えて学べるので、さまざまな可能性がある教育環境だと思います。─地域との関わりについてはいかがですか。松村 神戸としての持ち味を出したいなと思います。神戸市とはいろいろとやっていますが、神戸の民間の方々と交流し、神戸の産業の未来像と、この大学の人材育成を結びつけ、神戸のブランドにふさわしい形にしていけたらいいですね。大学とは地域に根ざしているものなので、それがうまく表れてくれば。─最後に、学長としての抱負を。松村 これまで培ってきたいろいろな人的ネットワークを活かして、神戸はもちろん全国、時には国境を越えていろいろな連携や広がりをつくっていけたらなと思います。民間企業や政府関係にも接点がありますので、大学という枠にとどまらず、神戸にとってプラスになるようなことができたらいいですね。芸術と工学、2つの視点を26

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