KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年11月号
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『正体』『海の沈黙』今月の映画原作:染井為人『正体』(光文社文庫)監督:藤井道人脚本:小寺和久、藤井道人出演:横浜流星 吉岡里帆 森本慎太郎 山田杏奈前田公輝 田島亮 遠藤雄弥 宮﨑優 森田甘路西田尚美 山中崇 宇野祥平 駿河太郎/木野花田中哲司 原日出子 松重豊 山田孝之配給:松竹©2024 映画「正体」製作委員会2024年11月29日(金)全国公開原作・脚本:倉本聰監督:若松節朗出演:本木雅弘小泉今日子 清水美砂 仲村トオル 菅野恵/石坂浩二萩原聖人 村田雄浩 佐野史郎 田中健 三船美佳 津嘉山正種中井貴一製作会社:インナップ配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ©2024 映画『海の沈黙』INUP CO.,LTD2024年11月22日(金)OSシネマズ神戸ハーバーランド ほか全国公開始まりからドキッとする。横浜流星演じる主人公・鏑木は死刑判決を受けた殺人事件の容疑者。その鏑木が脱走する。悪い人で怖い人。なのに、逃走中の彼に関わる人たちは皆そうは見ない。鏑木は悪人? 本当に?人は目の前にいる他者を、どこまで信じることができるのか。吉岡里帆演じる沙耶香の存在が、物語のキーとなる。悪を取り締まる側の警察、検察の力は絶対的。けれど本当に真実を見ているのか。間違いはないのか。鏑木を追う刑事・又貫役の山田孝之は周囲が驚くほどの集中力で挑んだという。人の人生を左右する、この職業の重責を背負って。主題歌はヨルシカの書き下ろし『太陽』。祈るような歌が賛美歌のように作品に寄り添う。原作者であり小説家の染井為人は「映画は小説のアンサー作品のようだ」と話す。小説を読んだ方にも藤井道人監督が描くラストシーンを観てほしい。脚本家・倉本聰の映画が36年ぶりに公開される。重要な舞台となるのは北海道。多くの倉本作品が生まれたこの地で、構想に60年を費やしながらも、まだ辿り着いていないという“問い”を描いている。軸となるのは美術作品の贋作。美術品の価値とは何か。社会的権威の保証? 有識者の評価? つけられた値段? 観る者の感性が置き去りになっている現代、その問いは、俳優たちの台詞によって矢のように刺さる。主人公・津山竜次を演じるのは本木雅弘。天才画家と呼ばれながらも、ある出来事を機に行方知れずに。世界に認められた画家・田村の妻・安奈(小泉今日子)は津山のかつての恋人。長い時間お互いを想い続けた男女の物語が、もうひとつのテーマとなっている。芸術家の苦悩も人間の業も愛情も、雄大な自然と古くからある美しい街並みが受け止める。にしてもせつない。真実を知ったとき、人が人を信じる想いに涙する倉本聰が書いておきたかったこと人間にとって『美』とは何か?公式サイトはコチラ公式サイトはコチラtext.田中奈都子104

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