KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年10月号
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『あるブルーグラス・シンガーのひとり言』。期待したブルーグラスのことはそれほど書かれてはいない。主に二人の子どもさんとの触れ合いである。そう、ブルーグラスはファミリーをも幸せにする音楽なのだ。ページを開くと、なんとも微笑ましい笑顔の写真がいっぱい。これは子どもさんの成長記録にもなっている。この本を手に取る者はほのぼのとした幸せ感に浸れる。わたしも自分の子育てのころを思い出して感慨ひとしおになった。こんな場面がある。日付は2006年11月22日。「ラジオデビュー」と題して。《西宮のコミュニティー放送、さくらFMで「稲葉和裕のミュージックジャーニー」という生放送番組を担当させていただいていて、早や3年半が経ちました。生放送ということで毎回緊張の1時間を楽しませていただいております。今夜の放送は、いつもの緊張感の数倍はあったでしょうか。というのは、幼稚園児である娘と息子が出演したからです。(略)「パフ」「甲陽幼稚園の歌」「静かなクリスマス」などを歌いました。》幼い二人の子どもさんのスタジオでの楽し気な写真もあって、この文章を綴る稲葉さん自身が幸せそうだ。そして最後のページを、立派に成長した二人の子どもさんの写真が飾っている。これまた笑顔だ。さらにCDの付録が付いていて、子どもさんの幼い時の歌声など、これもほのぼのとしていて、いいなあと思っていたら、後半に入っている成長したアリサちゃん(長女)の歌唱力にびっくり。思わず「上手い!」と声が出た。まあ、彼女も今はプロとして活躍する人。「上手い!」なんて上から目線で言うのがおかしいのではあるが。結論。子育てには父親も大いに参加すべし。それにはブルーグラスが最適なのだ。『あるブルーグラス・シンガーのひとり言』(稲葉和裕著・サザン・ブリーズ出版・税込み三千円)をご希望の方は「オフィス・ホワイト・オーク」(0798(72)0984)へ。(実寸タテ9㎝ × ヨコ16㎝)■今村欣史(いまむら・きんじ)一九四三年兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)、随筆集『湯気の向こうから』(私家版)ほか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・編集人。「半どんの会」会員。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。95

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