―例えばどのような管理ですか。お腹を膨らませているガスは軽いので上の方に溜まります。下腹部の手術では頭側を下げ、ガスを体の下の方に留めてお腹を膨らませ、上腹部では下肢側に傾けて上の方に溜めて膨らませます。場合によっては30度程度傾けることもあり、平らな手術台で行われる開腹手術と違って体が傾いた状態でベッドに寝て長時間耐えるのはとてもしんどいです。また、ガスに使っている二酸化炭素は体内に吸収されます。呼吸によって体外に排出しなくてはならず呼吸管理の方法も変わってきます。さらに、傾ける体を支える器具が皮膚を傷めていないか、神経障害を起こすような締め付け方をしていないかなど注意深く観察する必要もあります。ロボット支援下で視野がより狭い状態で手術が可能になり、将来はガスで膨らませる必要がなくなれば違った展開もあると思います。―カテーテルを使う手術の場合は?多くの場合、カテーテルの入り口は血管で、最近は足の付け根からがほとんどです。その部分の局所麻酔だけでできるケースも増えてきました。ただし、内容によって太いカテーテルを挿入したり、処置に長時間かかったりすると局所麻酔では難しく、全身麻酔が必要な場合もあります。―麻酔科の先生は手術中ずっと患者さんのそばで体の状態を管理しておられるのですね。術中に起きた体の変化は術後にも影響が残ります。患者さんがそれを乗り越えるまでの期間は基本的に血圧、心電図、酸素飽和度など24時間モニターで監視を続け、何か変化があればすぐに対応できるように見守り続けています。―それが救急・集中治療センターでの麻酔科の役割ですか。神大病院の救急・集中治療センターにはICU20床とHCU12床があり、術後の患者さんに限らず一般病棟で状態が悪化した、体調不良で来院されたなどという患者さんも含め主治医の先生から連絡を受けたら、入室の判断をして看護師長と共にICU・HCUを振り分けるのは麻酔科の役割です。入室する特に重症な患者さんを麻酔科が主となって管理するだけでなく、主治医や専門の先生方が主になって管理する患者さんについても状態を常に把握して必要に応じて麻酔科医の立場からアドバイスをします。逆に麻酔科医には分からないことがあれば専門の先生方に相談します。神大病院では各科との敷居が低くて、日常的にコミュニケーションを取りながら患者さんを見守っています。―術後だけでなく術前評価というのは?同じ術式で手術を受ける患者さんでも状態はそれぞれに違います。それを把握して、どういう管理方法が一番良いのかを術前評価の段階で考えます。また、いろいろな合併症を持った患者さんが手術を受けるまでには薬の調整や食事の88
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