「手術室」というイメージがある麻酔科ですが、術前・術後や集中治療室のほかいろいろな場面で役割を担っています。麻酔のことや神大病院麻酔科のことなど小幡典彦先生にお話を伺いました。―手術室での麻酔管理とはどういうものなのですか。手術を受けておられる患者さんが痛みを感じることなく苦しくないようにするのが麻酔の基本として、その上で手術という極めて非日常的な状況においても全身の細胞が普段通りの働きができるようにするのが術中の麻酔管理です。それによって、心臓や肺、肝臓、腎臓、胃腸などの臓器から皮膚に至るまでが普段と同じように働く状態が維持されます。これが、麻酔科が目指すところです。「痛くないように眠らせる」という一般的なイメージとは少し違うかもしれません。―普段と同じ状態を維持するために、例えばどんなことを管理するのですか。麻酔や手術、特に長時間の手術では日常とは違うことが全身に起きます。まず全身麻酔では多くの場合、呼吸は止まります。気道確保という手段で人工的に呼吸を調整し、全身に酸素を取り込んで細胞が働けるようにします。体が「休め」の状態ですから血管が拡張して血圧が下がる傾向にあります。そこで薬を使って普段と同じ血圧を維持します。手術中の患者さんは体温の調整機能が働かなくなり外気温に左右されます。手術室では室温が低めに設定されていますが、患者さん自身は「寒い」などと言えません。状態を観察しながら体温が下がらないように体を温めています。―体の状態が日常とは全く変わってしまう全身麻酔はどんな手術のときに、なぜ必要なのですか。手術に要する時間や術式によります。麻酔の目的が「痛みを感じないようにする」だけならば、基本的な「感覚を無くす」だけで済みますが、長時間になると動かずにじっとしてい神大病院の魅力はココだ!Vol.36神戸大学医学部附属病院麻酔科小幡 典彦先生に聞きました。86
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