KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年10月号
85/124

くつかあります。まず、協定締結すればまん延時にはすべての患者を受け入れる必要ありますが、かかりつけ患者を優先してもよいのかという点です。また、比較的初期からの行動を求められる可能性がありますが、平時からPPEなどを自力で備蓄しないといけないのか、情報が間に合うのかという点も懸念されます。ほかにも(表2)のような課題が挙げられます。─パンデミック時にかかりつけ医機能がうまく働くためには、どのようなことが大切ですか。飯山 まず、「かかりつけ医」という言葉にとらわれない医療の仕組みづくりが必要です。また、有事の際にすぐに行動できるように、平時から行政と医療者が協力し合える体制をとることも重要です。そして、みなさんが落ち着いた行動をとることができるよう、感染症や医療に関する冷静な広報を求めたいところですね。制定は見送られましたが、今回のパンデミックを経て、まず医療側と患者側の見解に齟齬がないよう、「かかりつけ医」という言葉の整理が必要なのではないかと感じます。一般的にワクチンの必要性の説明や、個別接種の際の予約や割り振りなどはかかりつけ医がおこなうものと思われますが、医師と患者の間でかかりつけ医かどうかということをあらかじめ明確にしておいた方がスムーズに運ぶでしょう。そして、かかりつけ医のいない患者への対応も一定のルールがあった方が良いと思います。─次の新興感染症に向けて、かかりつけ医機能を担う診療所にはどのような対応が求められ、また、どんな課題がありますか。飯山 感染症法の改正や兵庫県第8次医療計画での感染症医療事業の位置づけなどにより、感染発生から一定の期間をおいてまん延期の発熱外来を担当する診療所は、行政と協定を結ぶことになりました。しかし、この協定には疑問点もい乗り越えました。日本とは感染法上の取り扱いなどの違いもありますが、かかりつけ医だけで初期対応を取り仕切るのは困難で、実際にかかりつけ医制度はあまり機能していなかったと言えるでしょう。─パンデミック時のことを考えると、かかりつけ医機能はどうあるべきなのでしょうか。飯山 かかりつけ医登録制度の(表2) 協定締結に関する現時点での主な課題協定締結医療機関に関する課題初期から医療機関そのものを守る取り組みは?休業補償など、協定締結した医療機関が不利益とならないような取り組みは?協定を締結していない医療機関に関する課題協定を締結しない医療機関はかかりつけ医としてはどう行動すればよいか?患者に関する課題かかりつけ医がいない人の行動をどのように誘導するか?85

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る