KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年10月号
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マンパワー不足で処理が追いつきませんでした。また、民間保険が新型コロナ感染症の補償をはじめたため、感染証明書の発行要請が増えたこと、そのための検査希望が増えたことも業務の増加に拍車をかけました。─コロナ禍での新興感染症パンデミックにおいて、すでにかかりつけ医制度を導入していたヨーロッパ各国ではそれらが機能していたのでしょうか。飯山 (表1)をご覧ください。イギリスでは第二波以降、発熱患者の初期対応にかかりつけ医は関わらず、検査は街角や自宅などでおこない、陽性者のほとんどは病院の救急外来で対応しました。フランスもイギリスと同じような対応でしたが、かかりつけ医制度が凍結され、登録しているかかりつけ医以外の診察も受けられるフリーアクセスがおこなわれました。ドイツではかかりつけ医登録制度はありませんが、基本的にかかりつけ医が検査や診察をおこない、中程度以上の患者さんだけを病院で診てパンデミックを飯山 医療者側としては、新型コロナ感染症以外の患者さんを診る時間が減り、そのために収益に対する不安が生じました。また、新型コロナ感染症が感染症法上で二類に位置づけられたことにより、一般の医師には手に負えない特別な感染症と認識されてしまいました。そして、陽性者が出ただけで「コロナ医者」と呼ばれるなど、風評被害も問題も大きかったですね。このようなことから発熱患者の診察を断る医療機関が出てきたものと思われます。─風評被害については報道にも一因があると思いますが。飯山 メディアは混乱状況を伝えて非難するばかりで、なぜ混乱しているのかという現場の重要な点をほとんど伝えていなかったという印象です。また、メディアは主に都心部の情報を扱って地方との時間差についてあまり触れなかったこともあり、患者さんの不安をあおったのではないでしょうか。─ワクチンができたらできたで、その接種をめぐっても混乱が起きました。飯山 ワクチン接種の実施は自治体に任され、集団接種主体に進めた自治体とかかりつけ医による個別接種を中心にした自治体がありました。後者ではかかりつけ医の接種ということで、もともとかかりつけ医のいない方はどこに行けばいいのかわからず、かかりつけ医がいる方も予約が困難という状況で、ワクチン接種が受けられないのではという不安から混乱が生じました。─地域の診療所と保健所の連携もうまくいっていなかったと思いますが、その原因は何ですか。飯山 感染症の発生届が一気に増えて、保健所の手が回らなくなったのが大きな要因です。手書きの書類から新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER︲SYS)へと切り替わったもののたびたび運用が見直され、結局は保健所の83

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