KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年10月号
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た。もう何十回見ただろう。ならず者が悪の組織との因縁で銀行強盗を請け負うことになって、恋女房と一緒にメキシコ国境を越えて逃げ果せる痛快アクション劇だ。結局、最後まで観てしまった。別のチャンネルでは、60年代にヒットした勝新太郎と田宮二郎コンビの『悪名』シリーズの一作を見つけて、懐かしくて見入ってしまった。映画は映画館で観ないと風情も迫力もあったもんじゃな最近、「こんな映画を待ってたんや」と思わず口にしたくなるような新作映画に出会わなくなった。映画は明日を生きる糧であり、自分への景気づけだと思ってきた。でも、やりきれない日々を励ましてくれる映画が見当たらなくなってしまった。何か元気づけてくれるものはないかと、ケーブルテレビをつけたら、我らがヒーロー、スティーブ・マックィーン主演の『ゲッタウエイ』(73)が、放映中だっいが、この時ばかりは、アメリカの空気感も関西弁の爽快さも味わえたし、マックィーンは相変わらずやることすべてがカッコいいし、勝新太郎は会話しながらカレーライスを美味そうに平らげる、どちらも天性の俳優だった。ボクはそんな旧作をテレビで観て、やっとその日を乗り切ったのだった。先回の続きだが、1991年に劇場に足を運んだ映画を並べてみる。この頃、世界で井筒 和幸映画を かんがえるvol.43PROFILE井筒 和幸1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm映画『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』セルDVD発売中。50

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