KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年9月号
96/136

ト手術のメリットは大きいと思います。病気そのものを治す目的のためには開腹手術とロボット手術、どちらも大差ありませんが、機能の温存や身体の負担を軽減するという観点からロボット手術は患者さんにとって大きなメリットがある方法です。―腎移植手術を執刀するのも泌尿器科の先生なのですか。ロボット支援下で行われているのですか。はい、泌尿器科医が執刀し、他に麻酔科医や腎臓内科医が関わっています。腎移植についてはロボット手術がまだ保険診療の対象になっておらず、今のところドナーさんの腎臓を腹腔鏡手術で取り出し、開腹手術で患者さんに移植しています。保険適用があれば、取り出す手術はロボット支援下で行えますが、移植手術を受ける患者さんにとってロボットはそれほど大きなメリットはないと思います。―尿道や前立腺では内視鏡手術も可能なのですか。膀胱内の腫瘍部分だけを取る手術や前立腺肥大症などは尿道や前立腺に内視鏡を挿入して臓器の内部から切除が可能です。前立腺がんや膀胱全部を取らなくてはいけないがんの場合はロボット手術で行われています。―膀胱は一つしかないので取ってしまうと排尿が困難になるのでは?膀胱と同じく管腔臓器である腸を切り取って代用膀胱を作り尿管とつなぐことは可能で、この場合は尿道から尿は出せます。ところが通常は膀胱に尿が溜まると信号が脳に伝わり尿意を感じますが、残念ながら腸を使う膀胱にはそういった機能が備わっておらず定期的に排尿を促す必要があります。患者さんの意向に沿って行いますが、必ずしもお勧めできる方法ではなく、膀胱全摘手術と同時にロボットで実施可能な、直接尿を体の外の採尿袋へ常時排出する方法が一般的です。―治療法について重要な選択が必要なときは患者さんの意向に沿うのが基本ですか。もちろん患者さんの意向をお聞きします。しかしご高齢の場合などは医学的に非常に難しい内容を詳しくお話しするとかえって患者さんを混乱させてしまいます。予め患者さんの年齢や体力など考慮した上で選択肢をお話しするようにしています。―泌尿器系のがんは他の臓器のがんに比べて少ないのですか。予防法はあるのですか。決して少ないとはいえません。生殖器も含む男性に関しては、がん患者さんの約四分の一が泌尿器系のがんです。がんは基本的に遺伝子異常が原因で、そこに他の要素が相まってできるものですから、全ての原因をクリアにすることは難しい96

元のページ  ../index.html#96

このブックを見る