KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年9月号
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ゆっくり流れおりる美うるわしの神戸よ」という一説を引用してここにその方向性が示されていると指摘しつつ、玄関口である三宮を歩いて楽しいウォーカブルなエリアにする、将来的にはLRTで三宮とウォーターフロントを結ぶといった構想を披露。また、都市機能の分散や自然との共生を課題に挙げ、山の再生や森林資源の活用では梼原から学ばなければならないと見解を示した。これに対し、久元市長が進めている脱高層住宅は神戸らしさを保つ秘訣で、ヨーロッパでは高い物を避けてきた都市がキャラクターを維持していると隈氏。吉田町長は「神戸は大好きな街。守るべきものをしっかり守っている」とコメントし、ひと街創り協議会を中心に市民が主体となってまちづくりを進めていることも評価した。続いて久利会長は梼原町とのご縁を三宮の「外交の成果」と評し、交流に最も必要な要素がスピーディーで誠実で明るい「神戸気質」であり、梼原に学ぶべきことは多いと話した。神戸の都市という側面について隈氏は、大きな街でネットワークを築くことは難しいが、人がすれ違い出会うストリートの中にノード(結節点)をうまく配置することで人口の150万という数が抽象的な数字から具体的な数字に変わっていくので「ぜひやっていただきたい。神戸だからそれが可能」と提案するとともに、神戸各所の場所性を生かして文化に繋げていくことが都市再生のきっかけとなるとアドバイス。これ呼応して「行政でなく民がどれくらいやるか」といくつかの具体例を挙げた久利会長は、「私たちがやっていく」という意識をしっかり持ってまちづくりに取り組むという決意と、神戸のランドマークとなるような六甲山を背にした木造の高層建築という夢を熱く語り、最後に隈氏に「建築家は神に次ぐ」という画家の鴨居玲の言葉を捧げ、万雷の拍手の中でシンポジウムは幕を下ろした。今回の企画はもともと令和3年に開催予定だったがコロナ禍のため断念し、ようやく3年越しに実現。観衆も240名の定員に対し1300名の応募という大盛況だった。なお、梼原町は高知県西部、愛媛県との境にあり、車で高知から1時間半、松山から2時間前後というアクセス。隈建築のみならず、四国カルストや坂本龍馬脱藩の道、神楽など見どころも多く、宮本常一の名作『土佐源氏』の舞台でもある。〝雲の上のまち〟梼原へぜひお出かけを。33

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