7月13日、中央区文化センターで、「神戸三宮の未来を考える」をテーマとした三宮センター街2丁目商店街振興組合主催のシンポジウムが開催された。基調講演の講師に招聘されたのは、国立競技場の設計に携わった隈研吾氏。建物のみならずまちづくりにも手腕を発揮し、モンゴル新首都建設など40以上の国々でさまざまなプロジェクトを手がける世界的建築家だ。梼ゆすはら原町の自然と人に魅了された基調講演は、「ヒューマンなまちづくり」をキーワードに、高知県の梼ゆすはら原町の話題からスタート。「ヒューマンな」とは自然を感じられるということで、世界中でこれを大切にしたまちづくりがおこなわれているが、隈氏がこれに気付いたのは梼原だとか。友人に誘われ1948年築の芝居小屋「ゆすはら座」の保存・活用に関わり、この町の自然と人に魅了されたという。それがきっかけとなり設計した町役場や雲の上ギャラリーなど6つの建物をスライドで紹介したが、現在はこれらが人気の観光スポットとなっている。自然が身近なだけでなく、腕の良い職人と直接話ができる梼原で、地元産の木材や和紙、かやぶきなどの素材や伝統的手法を通じ、コンクリートと鉄に替わる新しい自然素材の可能性を見出した隈氏は、これらを各地で応用するようになっていったそうで、東京の浅草文化観光センターをその一例として挙げたが、スクリーンに映し出されたそのユニークなビルのデザインに観衆たちの視線が集まった。続いて東日本大震災で甚大な津波被害を受けた南三陸町の復興プロジェクトについて解説。高台に街ごと移転することになり、その際にヒューマンな街にすべく隈氏がこだわったのは、歩いて楽しいストリート。このように人々が集い交流する場を設けることがにぎわいに結びつくと隈氏は語り、そのもう一つの例として新潟県長岡市の「土間のある市役所」をピックアップしたが、ここは実際に年間100万人が訪ねるようになったそうで、その効果には驚くばかりだ。そして国立競技場のほか、フランス、アメリカ、イギリス、デンマーク、シンガポールの自身の作品を通じ、新しい流れを世界の例で紹介。その流れとは「自然が感じられる」ことと、「歩いて楽しめる」ことで、歴史があるところにそういう要素が加わると、新しいまちづくりに古い歴史が感じられるようになるので、そういう街を三宮でもと語った。31
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