KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年9月号
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術家と交流しながら、様々な現場でコラボレーションを繰り返してきました。本展では、このような芸術家の仲間とコラボした作品が展示されています。この時代を共有した芸術家の大半は、もう現世にはいません。ということは、こちらが彼らより老齢になってしまったということです。だからこのような展覧会が可能になっているのです。本展がレクイエムと名付けられたのは、本展に登場する人達全員が死者だからです。ここ数年の間に、友人、知人が大量に亡くなりました。僕の電話帳のほとんどの名前は死者です。用のない電話帳になってしまいました。此岸にいる友人、知人はほんのひと握りで、親しかった人達は、全部彼岸へ出掛けてしまいました。あと何十年もしなながら時空を越えて共存するヨコオワールドを体感する場になればと平林は言っています。 ここ数年の間に、かつて創造を通して交流した、日本の代表的な文化人、芸術家が驚くほど沢山鬼籍に入ってしまいました。僕がグラフィックデザイナーとして本格的にスタートしたのは1956年。神戸新聞社の勤務デザイナーを退職して1960年に上京、日本デザインセンターに入社した時点から始まります。この会社には、日本有数のトップデザイナーが集結していました。しかしその多くは、すでに鬼籍の人となっています。4年間勤めたあと、僕はフリーランスのデザイナーになり、この時代を形成した多くの芸『レクイエム 猫と肖像と一人の画家』と題する展覧会が、9月14日から横尾忠則現代美術館で開催されることになりました。本展のキュレーションは、学芸員の平林恵による「横尾が見送ってきた親しい人々と愛猫に思いを馳せる展覧会」で、肖像作品や作家の言葉で構成されたものです。「肖像(遺影)」を展示する部屋では、家族や友人をはじめ、作家の生き方や創作に影響を与えた人の肖像画や関連資料を紹介し、「肖像」の部屋に対して「猫」の部屋では、愛猫タマを偲んで描いた『タマ、帰っておいで』(講談社刊)の原画シリーズのほか、在りし日のタマの写真やスケッチを展示すると聞いています。本展は、いわゆる死者との交流を、此岸と彼岸を往来し美術家横尾 忠則撮影:横浪 修神戸で始まって 神戸で終る Tadanori Yokoo16

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