KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年9月号
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『憐れみの3章』『愛に乱暴』今月の映画監督:ヨルゴス・ランティモス脚本:ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ホン・チャウ、ジョー・アルウィン、ママドゥ・アティエ、ハンター・シェイファー配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン製作年:2024年原題:KINDS OF KINDNESS©2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.2024年9月27日(金)全国公開監督・脚本:森ガキ侑大出演:江口のりこ小泉孝太郎 馬場ふみか水間ロン 青木柚 斉藤陽一郎梅沢昌代 西本竜樹 堀井新太 岩瀬亮/風吹ジュン原作:吉田修一『愛に乱暴』(新潮文庫刊)脚本:山﨑佐保子/鈴木史子 配給・制作:東京テアトル制作プロダクション:ドラゴンロケット©2013 吉田修一/新潮社 ©2024 「愛に乱暴」製作委員会2024年8月30日(金)公開!今年のアカデミー賞で、11部門ノミネート、4部門受賞の『哀れなるものたち』、ランティモス監督最新作が公開。映像もテーマも強烈なインパクトがあった前作に続き、難解さもさらにパワーアップ。邦題から感じる「どういうこと?」感、何のヒントもくれないポスター、観た人によって感じ方は全く異なる(と思う)ので、はっきりとしたネタバレもない。この作品は観るしかない、観てほしい。今作はつながりのない3つの物語で構成、同じキャストがそれぞれで3つの役を演じている。『永遠の門 ゴッホの見た未来』(18)では、悲しき天才芸術家だったウィレム・デフォー、『ラ・ラ・ランド』(16)であんなに可愛かったエマ・ストーンが、奇妙な世界に生きている。奇妙だけれど、似たような出来事や人間関係は身近にもあるような…。「ね、君たちもだいたいこんな感じでしょ」と、ランティモス監督はおもしろがっているかもしれない。でも正解はわからない。「わからない」をおもしろがる、それでいいかと思う。原作は吉田修一。『悪人』『怒り』などの映画化でも話題になったベストセラー作家が描く、ある主婦の話。登場するのは皆“ごく普通”の人。家庭でも職場でも、私たちが暮らす日常と同じく、特に悪人がいるわけではない。だからこの作家の小説は恐ろしい。小説に惹かれた監督は主婦・桃子を、“一生懸命に生きる女性”と話している。夫を愛し、家族を大切にし、多くを望まず自分個人の幸せはどこかへしまい込んでしまった。なのに、どうして、愛に乱暴?桃子役は江口のりこ。お利口な主婦の、そうではない内面を目線一つで表現。夫役の小泉孝太郎は、これまでのイメージを覆しすぎていて驚く。“普通”の姑を“普通”に演じる風吹ジュンは怖い人だ。それぞれに言い分があり、それぞれに共感できる。不思議で奇妙で強烈!名優たちの怪演吉田修一×森ガキ侑大愛の裏側を撮る公式サイトはコチラ公式サイトはコチラtext.田中奈都子※神戸っ子HPに、森ガキ侑大監督のインタビューを掲載中。神戸っ子HPはコチラ116

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