KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年9月号
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今村 欣史書 ・ 六車明峰連載エッセイ/喫茶店の書斎から   湯気の向こうからこの連載「喫茶店の書斎から」もついに百回目を迎えました。この間、何度も入院するなどピンチがありましたが、一回も休まずに書かせて頂けました。感謝です。そこで今回、百回を記念して、というわけでもありませんが、わたしのことを書かせて下さい。富田砕花師の「他に対って自己を説明し、自分を理解せしむるの愚」という言葉を知らぬわけではありませんが。最近、新著を出したのです。『湯気の向こうから』という随想集。この「喫茶店の書斎から」の姉妹編のようなもの。でも決して売らんがための宣伝ではありません。本誌『KOBECOO』のほかに毎月随想を書かせてもらっているところがある。『六甲』という短歌誌。『六甲』は昭和8年創刊というから兵庫県では最も伝統のある短歌誌だろう。通巻1050号を超える。過去には兵庫県文化の父といわれた富田砕花師はじめ、兵庫県の錚々たる文化人が執筆してきておられる。厚かましくもそんなところへ、2016年5月号からもう8年を超えて書かせていただいている。その随想は「湯気の向こうから」というタイトルでスタートしたのだが、一昨年、9月号までの77回を終えたところで一旦区切りをつけ、今はテーマを衣替えして新しいシリーズを書かせてもらっている。それはさておき、今年になって「湯気の向こうから」全編を改めて読んでみた。すると、これは一冊にしておきたいとの思いが募った。内容は本誌の「喫茶店の書斎から」と同じく書籍や文学が中心。しかし、わたしの身のまわりの人間臭い話も多く載せている。世界を狭めて書いていると言っていいのかもしれない。ということで内容が個人性の強いものだから出版社による企画出版には向かないと思い、私家版で作ることにし、2年前に『恒子抄』という詩集を作ってもらった印刷屋さんに頼むことにした。ここの社主はわたしの長男の小学校時代の同級生。心安くおつき合いしてもらっている。なんでもわがままが言えるのだ。102

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