昭和初期、大阪で活躍した「山口財閥」の邸宅で知られる『滴翠美術館』が新たなシーンをのぞかせ話題を呼んでいる。『三菱UFJ銀行』の前身である『山口銀行』を経営した四代目・山口吉郎兵衛は財界を離れた後、日本古来の陶芸や玩具の研究、収集にその生涯をささげた。重要文化財である『光悦作 扇面鳥兜螺鈿蒔絵料紙箱』や『千利休書状』を含む古美術品コレクションは2500点にもなり雅号であった「滴翠」を冠して多くの目に触れる機会を現在も提供している。また昭和モダニズムを代表する建築家・安井武雄が設計を手掛けた館は「学舎」として広く活用されている。昭和43年に敷地内で開設した「滴翠窯」(会員制)では陶芸の一日体験教室を実施。近年では「吉郎兵衛居室」にてスパークリング日本酒を手に観世流の能舞を嗜むイベントも行われた。この日は地階にある「茶室・梅松庵」において茶道教室が催されていた。裏千家・堀尾宗苗さんが館蔵品のお床飾りを前にお点前を披露し凛とした空気が流れる中、聴講生を魅了した。「当館は展示のほかに様々なことが学べる場としてもご利用いただいております。若い方にも足を運んでいただき文化発信の場として活用いただきたいです」と副館長の山口昌伸さんは期待を寄せる。六甲山の自然に囲まれたロケーションで芸術、学びが同時に楽しめる「贅沢な秋」の訪れが今から待ち遠しい。神戸のカクシボタンkakushi button写真/文 岡 力茶道教室の様子■公益財団法人山口文化会館『滴翠美術館』兵庫県芦屋市山芦屋町13-3【開館】10:00〜16:00入館は15:30まで【休館】月曜日・夏季・冬季■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。日本放送作家協会関西支部事務局長。大阪芸術大学短期大学部(伊丹学舎)、神戸電子専門学校 非常勤講師。第128回かつての邸宅は多様性に満ちた学びの場公益財団法人山口文化会館『滴翠美術館』副館長の山口昌伸さん道勝法親王筆百人一首歌かるた展示ケース内95
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