洞」のがんでは足の付け根からカテーテルを入れて動脈に直接抗がん剤を入れながら放射線治療を併用します。鼻腔の上部にできるがんでは耳鼻咽喉科が内視鏡で視ながら鼻腔側から、脳外科の先生が顕微鏡で視ながら頭の中から同時に手術を進めてがんを切り取り、顔に傷を残さないようにする方法もあります。―頭頸部の手術では機能の回復も必要ですね。放射線治療の効果が期待できない舌がんでは外科手術なしで完治は難しく、形成外科にもチームに加わっていただき失われた部分の再建手術で食べたり喋ったりする機能を回復させます。脳梗塞など脳血管障害で嚥下障害を起こした患者さんの治療では喉頭を吊り上げたり、食道の入り口を広げたりする手術で飲み込みやすくします。声が出にくい発声障害の患者さんのいろいろな方法で、音声を改善しています。喉頭がんで喉頭を摘出した患者さんにも食道発声や、電気喉頭、気管食道瘻発声(プロボックス®)などの代用音声により会話ができるようになります。―顔面の麻痺や難聴も外科手術で回復が可能なのですか。顔面神経麻痺の原因はほとんどがヘルペスで、抗ウイルス薬やステロイド剤で治療します。それでも難しい場合は、脳から出た神経が通っている骨の隙間を少し広げてあげて神経へのプレッシャーを軽減すると回復の可能性もあります。難聴については耳垢が詰まったり鼓膜に穴が開いたり、中耳炎で水が溜まったりというメカニックの問題とは別に、ご高齢の方の場合は、加齢による影響で音を感じる神経の機能が落ちていることが多く、補聴器が有効です。最終的に聞こえが非常に悪くなった場合は、内耳に電極を埋め込む「人工内耳埋め込み術」という者さんや関連診療科との連携が必要な進行がんの患者さんの場合などは当院でお引き受けし治療に当たらせていただくこともあります。口腔がんの中でも症例の多いもは「舌がん」です。当院では、歯科口腔外科にご紹介頂いた場合は歯科口腔外科で、当科にご紹介頂いた場合や進行がんの患者さんは当科で治療に当たっています。院外、院内ともに連携協力が円滑に行われているのは神大病院が自慢できる点の一つだと思っています。―頭頸部がんの手術にはどんな方法があるのですか。がんの場所や進行の段階によって最も効果的で、できるだけ後遺症を残さない方法を採用します。早期のがんでは内視鏡手術やダ・ヴィンチを使う鏡視下手術など低侵襲な手術を行い、喉頭がんや下咽頭がんには放射線治療の併用も効果的です。副鼻腔の中でも「上顎92
元のページ ../index.html#92