KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年8月号
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なしで建築チームを組むとか、いまDIYも浸透してきていますのでそこにプロのサポートを入れたりとかも考えています。 ─なぜそのような事業をはじめようと思ったのですか。中田 これまで総合建設業の世界に身を置いていましたが、現場で素晴らしい建築に貢献しているのに日の目を見ない技術者や技能者に申し訳ないと思ってたんです。つくったのは「〇〇建設」と名前が出るんですよね。でも立派な仕事をしたのは、大工さんとか、左官さんとか、金物加工する人とか、さまざまな業者さんや職人さんなんですよ。だけどそういう人の名前は建築雑誌とかに出てこない。名もなき名職人がいっぱいいるのですが、もっともっとそういうところにスポットを当てて、もっと報酬をもらって、もっと楽しく仕事してほしいなと思ったんです。建設会社に囲い込まれて、安定して仕事を続けるという考えもありますが、中にはプロ野球のFAのように、厚遇や新たな機会を求めている職人もいる。その熱い思いを応援したいというのもあります。─職人の世界は旧態依然というイメージですが、実態はいかがですか。中田 いまJR灘駅近くで屋根工事のお手伝いをしているんですけど、形状が独特で加工が難しいんです。30歳前後の若い職人に依頼しているんですけれど、その職人さんは自分の子どもも職人になって欲しいと言ってました。そして、子どもも父ちゃんみたいになりたいと言っているそうです。僕らの時代は、職人が子供に「あんたは安定したサラリーマンになりや」だったのに、いまは回り回って子供が親の職人世界に憧れる。めっちゃいいことじゃないですか。その若い職人たちが休憩時間にスマホ見ながらワイワイやっていたので、「はよ仕事しいや」と注意しようと思ったら、ドイツの板金職人の動画を見てました。「見てくださいよ、この鋏めっちゃデカいですよね!こんなんできる職人おるんですね」と勉強しているんです。時代は変わってる、もっともっとこういう職人が育つ土壌を作らなあかんなと。元々職人は死ぬほど働いて死ぬほど稼ぐ意欲が旺盛な人が多いんです。24時間仕事のことが頭から離れない。仕事が大好きなので、「みんなゆっくり働こうぜ改革」は迷惑なんです。ガシガシ働いて、仕事に情熱を注いで、家族から尊敬され、後輩から憧れられるのが本来の姿だと思います。神戸は職人が育つ街─なぜ神戸で起業したのですか。中田 素晴らしい職人は、素晴らしいものが判別できるクライアントがいないと育たないんです。神戸は目が肥えた人が多いので、技術力の高い職人が育っています。綺麗な収まり、おしゃ41

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