KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年8月号
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無駄がない安藤建築─そして今回、社屋の設計を安藤さんに依頼しましたが。中田 恵比寿工匠を立ち上げるにあたり、淡路島の岩屋で土地を探してたんですよ。知り合いから「岩屋にいい土地あるよ」と連絡があって。そしたらまさかの岩屋違い、灘の岩屋だったんです(笑)。2003年に「4×4の家」に携わり、安藤さんから多くを学び、以降もいろいろな設計事務所にお声がけいただいて、いろいろな仕事をさせていただきました。そして今回、作り手としての卒業という感じで、再出発には安藤さんに是非お願いしたいと。安藤さんから設計してもいいとお返事頂き、着工してみたら全然卒業のレベルに達していなかったです。安藤建築を理解し切ったつもりで、手のひらから筋斗雲で何千里もすっ飛ばして、休憩中に柱に落書きしたらそれは安藤さんの指で、全然手のひらから出られてなかった、という感じでショックを受けました。─建築模型はご自身でつくられたそうですが。中田 ふつうは施主がつくるものじゃないんですけどね。でも僕は、県内で一番模型つくるのが上手い社長の自信がある(笑)。図面は平面と立面だけですから、どういう空間かわからないんですよね。でも、模型にするとその収まり方がわかるんです。建築家ってパズルのように図面を描くんじゃなくて、空間をイメージして、要素を配置します。模型をつくることで、空間の拡がりや空間の関係が着工前になんとなく理解できました。─新社屋が完成して、ご感想はいかがですか。中田 ここは敷地がとても狭いんです。5m角くらい、車2台分くらいのスペースしかないのですが、それでも広く感じるんです。希望もちゃんと叶えられている。例えば、敷地が少し斜めになっているのですが、その部分にエレベーターがきれいに収まっています。当然ですが、私の知る限りこの敷地にこの設計ができる建築家は他には知りません。間違いないです。建物ができてから、「いい敷地を見つけましたね」と言われることもありますが、「4×4の家」同様、安藤さんの建物が建つと敷地がよかったように見えるんです。それまで誰も見向きもしなかった土地なのですが。職人を憧れの仕事に─恵比寿工匠とはどんな会社ですか。中田 職人や業者のマネジメントの会社です。建物を建てるとき、普通は施主が工務店に依頼し、工務店が業者や職人を選んで工事しますが、恵比寿工匠ではその業者や職人の紹介や調整をおこないます。また、この社屋を建てる時のように工務店40

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