KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年8月号
28/136

よ」と笑った。来年開催のパリ五輪の新競技にも決まり、知名度が上がったブレイキンを半世紀近く前から…。バレエ界の重鎮が「うちの教室へ」と声をかけたくなるにはその理由があるのだ。小学生の頃の夢…生涯役者『あまちゃん』をはじめ、テレビドラマや映画など舞台以外でも、その唯一無二の存在感を放ってきた。主演映画『小森生活向上クラブ』(2008年)の片嶋一貴監督、2021年に公開された『空白』の吉田恵輔監督に取材したとき。両監督とも「古田さんは現場で演出する必要がない。脚本を渡したら後は任せておけばいいのですから」と声を揃え、絶大な信頼を寄せて話す姿が強く印象に残っている。この話を伝えると「いつも監督の意図通りに演じていますからね」と答え、「脚本を読んで監督の意図を理解する。それが役者の仕事だと思っていまこの指導者の名前は貞松融。妻でバレエダンサーの浜田蓉子と1965年、故郷の神戸で『貞松・浜田バレエ団』を結成。教室を開き日本バレエ界に貢献してきた重鎮だ。「ミュージカル俳優になるためには、クラシックバレエやジャズダンス、タップダンスなどの技術も必要だと思っていたので通うことにしたんです。もちろん、ずっとただで」と笑いながら古田が振り返った。のん(能年玲奈)がヒロインを演じ、社会現象を起こしたNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で、古田はのんが所属する芸能事務所の社長を演じた。ドラマの中で共演者と一緒に古田が踊るシーンは傑作場面として語り継がれている。振付師の木下菜津子が「古田さんは覚えるのが一番早く、一番踊りがうまかった」と称えたエピソードは有名だ。この話を古田に向けると、「中学生の頃から、ブレイキン(ブレイクダンス)なんかをやってましたから。神戸ハーバーランドでよく練習していたんですす」と持論を語った。さらに「いつでもどんな要求にも応える準備ができていないと俳優とはいえない」とも。「それがミュージカルなら、さまざまなジャンルのダンスができて歌も歌える。いつでも演出家の要求に応える準備をしておくのが役者の務めです」と強調した。大阪芸術大学ではミュージカルを専攻。新感線の先輩俳優、渡辺いっけいから「次の舞台に出て」とスカウトされ、「一回きりのつもり」がそのまま看板俳優となった。さらに、新感線の公演と並行しながら、蜷川幸雄や野田秀樹、鴻上尚史ら日本を代表する演出家たちの舞台にも上がり続けてきた。舞台の他、宮藤官九郎脚本のドラマの常連俳優でもある。その中で、「同じ舞台で共演し、凄いと感じた俳優」を教えてくれた。「大竹しのぶさん、白石加代子さんは本当に凄いと思いました。それまでオイラが〝宇宙一〟芝居が上手いとうぬぼれて28

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る