KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年8月号
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映画化された二人の出会い作家、島尾敏雄と妻、ミホ。二人の生涯は波瀾に満ちていた。その出会いは第二次世界大戦末期の1944年12月。第18震洋特攻隊指揮官を命じられ、鹿児島県の奄美群島加計呂麻島の基地へ着任した海軍少尉の島尾は、温厚で礼儀正しい人柄から島民たちに先生と呼んで慕われていた。島の小学校教員だったミホも島民たちに優しい島尾を慕う一人。島尾も、またミホに惹かれ、二人はごく自然に惹かれあっていった。だが、島尾は自ら死を覚悟し、この島へやって来た特攻隊員だったのだ…。1945年6月。沖縄が米軍に制圧され、加計呂麻島の基地で出撃を待つ島尾たちの特攻の日は目前に迫っていた。二人がどのように出会い、恋に落ちていったのか。それをつぶさに描いた映画がある。2017年公開の映画「海辺の生と死」はミホの同名小説と島尾の小説「島の果て」を元に越川道夫監督によって製作された。カゲロウ島(加計呂麻島がモデル)に赴任してきた海軍の朔中尉(永山絢斗)と恋に落ちる島の小学校の代用教員、トエ(満島ひかり)の物語。朔のモデルは島尾、トエのモデルはミホである。特攻を決意した島尾の壮絶な体験を、ミホの視点から臨場感豊かに描き上げた秀作。越川監督は島尾夫婦の熱心なファンで「いつか自分の手で映画化したい」と構想を温め、ミホ役には「満島ひかりしかいないと決めていた」と明かしている。映画公開前に満島を取材した。このとき彼女自身、「自分にしかミホを演じることはできないという覚悟でした」と語った。その真摯な眼差しが強く印象に残っている。「幼かった頃、祖母が暮らす奄美大島へよく遊びに行っていました。島は私のルーツです」と彼女は話し、この映画への出演は「運命だった」と熱く語っていた。また、「共演者もスタッフも島のことを詳しく知らない。島のことを本当に分かっているのは私だけ。島を代表するつもりで演じていた」とも。沖縄出身の満島は加計呂麻島の方言や島の歴史やしきたりなどを学び、共演者やスタッフに教える役割も担っていた。島に伝わる伝統の歌を満島が切々と歌い上げるシーンは胸に響き、感動的だ。神戸偉人伝外伝 ~知られざる偉業~後編島尾敏雄特攻からの生還…覚醒した文学への情熱128

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