KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年8月号
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『ボレロ 永遠の旋律』今月の映画と本監督:アンヌ・フォンテーヌ出演:ラファエル・ペルソナ ドリヤ・ティリエ   ジャンヌ・バリバール   ヴァンサン・ペレーズ エマニュエル・ドゥヴォス原題:BOLERO配給:ギャガ©2023CINÉ-@-CINÉFRANCE STUDIOS-F COMME FILM-SND-FRANCE 2 CINÉMA-ARTÉMIS PRODUCTIONS2024年8月9日(金)公開!『愚道一休』著者:木下昌輝定価:2,200円(税込)集英社その曲は、15分に1回、地球上のどこかで演奏されているそうだ。最初から最後まで、同じリズムが繰り返し刻まれるアノ曲、音楽史上最も成功したと言われる『ボレロ』。この作品は、ボレロの誕生までを描いている。注目したいのは、作曲家本人がこの曲を “憎んで” いたということ。あれだけ気持ちのいいフィナーレを作っておきながら、である。曲を依頼された頃、ラヴェルはスランプの真っ只中にいた。けれど、天才作曲家をまわりは放ってはおかない。作らなくてはいけない。紳士的で繊細な彼はよくモテる。パリの女たちも彼を放ってはおかない。締切は迫る…。話は変わるが、坂本龍一さんはフランス音楽を愛していた。ご自身の葬儀のために用意していたプレイリスト全33曲のうち、14曲がフランスの作曲家による作品だった。ドビュッシー、サティと並んで、ラヴェルの2曲も含まれている。ラヴェルの音楽の魅力は、坂本さんがたくさん語っておられるので読んでみてほしい。一休さんといえば、幼い頃に母親と離れ、寺で修行し、よく働き、よく学び、「屏風の虎」「橋の端」で殿様をよろこばせ、世のため人のために人生を捧げた立派なお坊さん。そんなイメージを持っている、子どもの頃、アニメを見ていた方に、新たな一休さんを紹介したい。再び出会ったこの作品の中の一休さん、一休宗純は、腐敗した禅の世界にいて、腹の底に怒りをもち、母を恨み母に恨まれ、権力に逆らい、極悪人と対峙、殺人事件も目の当たりにする。身に降りかかる出来事一つ一つがけっこう重く、室町時代も現代も変わらない。今更だけれど、アニメはアニメ、美しすぎたのだ。やがて風狂の人と言われるようになるのだが、彼は欲望のままに進む道を選ぶ。他人から見て愚かであろうと「愚こそ 美なりと」。その生き方に目が離せなくなる。人の魅力とは、そうしたものなのだろう。ラヴェルの魂を奪った名曲はいかに生まれたのか愚かな道でも、貫くことはかっこいい公式サイトはコチラtext.田中奈都子102

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