KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年8月号
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andcarsMovie nitinut380@shutterstockサーブ9000CS 1996年サーブ社は航空機メーカーでもあり多くの旅客機や軍用機を開発製造してきた。その技術を活かして乗用車を開発、1950年からサーブ92を製造販売する。サーブ9000は1984年にデビュー。イタリアのアルファロメオ164、ランチャ・テーマ、フィアット・クロマ、そしてサーブ9000の4車種によるティーポ4プロジェクト。フロアパン、サスペンションなどを共同開発することでコストを削減。エンジンやボディーは各メーカーが独自開発する。ヨーロッパでは大型セダンに位置して、BMW5シリーズ、ベンツEクラス、などが競合車種。アルファ164の優れたデザイン、ランチャ・テーマにはフェラーリ328のエンジンを搭載したテーマ8.32など話題となった。劇中の9000CSは後期型(1996年)のモデルであり、各部に改良を加え、2300ccターボ、200馬力のエンジンを搭載、静かで、ゆとりのあるサイズ、安定した走りに評価は高かった。SAAB9000CS映  画:『幸せなひとりぼっち』 スウェーデン 2016年登場車両:サーブ9000CSオーヴェ(ロルフ・ラスゴード)は若き日を回想する。幼少期から「サーブを超える車は無い」と言う父の言葉を信じて育った。父親譲りで車(サーブ)好き、青年になったオーヴェは美しいソーニャ(イーダ・エングヴォル)と結婚、ソーニャはサーブのことを理解してくれた。新興住宅地で新婚生活が始まり、オーヴェは地区会長に選ばれ、副会長のルネと安全な町づくりに取り組んだ。気の合う2人だったが、唯一の違いは、ルネがボルボ好きだったことだ。オーヴェは「サーブ93」、ルネは「ボルボ140」に乗っていた。なんとか仲よく付き合おうとしていたが、オーヴェが「サーブ900」、ルネが「ボルボ240」に乗り換える頃には次第に疎遠になった。そしてルネが地区会長選挙に立候補しオーヴェは会長の座を追われて、怒りのあまり新型の「サーブ9000CS」を購入したが、ルネも早速「ボルボ960」を買って対抗、ふたりの対立は決定的なものとなったが、いつまでもケンカしているのは大人気ない。オーヴェは仲直りを持ちかけた。ルネは「新車を見せるよ」と言ってガレージから出してきたのは「BMW」…。それを見てオーヴェは裏切り行為だと怒った。ボルボ乗りを貫くならまだ許せるが、スウェーデン製の車以外に乗るなど裏切り行為だ。ルネの後任の地区会長はアウディ、隣に引っ越してきた男はヒョンデに乗る、ますます偏屈になるオーヴェだった。そんな折、妻ソーニャを亡くし、真面目に43年間務めた鉄道会社から突然のリストラ。今は生きる気力を無くし、町内では偏屈な男と思われますます孤立するのだった。そんなオーヴェは自殺を試みるのだが、向かいに引っ越してきたイラン人家族と妻のパルヴァネに自殺のタイミングをことごとく邪魔される。何かとパルヴァネや子供の面倒を見るうちに親しくなりパルヴァネに過去を話す。応援してくれるパルヴァネと家族、パルヴァネに3人目の赤ちゃんが生まれて、珍しくゆりかごをプレゼントするオーヴェ。喧嘩していた旧友ルネの体調が優れず施設に入れようとする役所、だがルネの妻は施設に入れたくはない。オーヴェは役所の人達を退散させるのだった。その帰りに心臓発作で倒れ、パルヴァネや町の人たちに助けられる。そうして町内の人々とのふれあいに喜びを感じ、生きがいと共に明るさを取り戻していくのだった。笑いあり涙あり、人生捨てたものじゃないとホッとできる116分。リメイク版は2022年「オットーという男」主演:トム・ハンクスがある。文・株式会社マースト  代表取締役社長 湊 善行10

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