KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
97/136

『大いなる不在』今月の映画と本監督・脚本・編集:近浦啓出演:森山未來真木よう子 原日出子/ 藤竜也製作・制作プロダクション:クレイテプス配給:ギャガ©2023 CREATPS2024年7月12日(金)全国順次公開『贋品』著者:浅沢英定価:2,200円(税込) 徳間書店認知症を患った父と両親の離婚によって疎遠だった息子が、父の逮捕をきっかけに再会する。5年前、25年ぶりに会ったときとは、まるで別人の父。しかも再婚した女性は行方不明。息子は自ら真実を探り始める。以前、本誌の取材で藤竜也は認知症について、「人間の知能は衰えるけれど、その人が生きてきた道は消えない。誰も人を傷つけてはいけない」と話した。その作品で患ったのは友人だったが、今作では自身が認知症に。藤が演じる遠山陽二の姿に、藤の言葉が重なった。彼の“道”に深く存在し続けた純愛の物語は、次第に卓の心を動かす。キャスティングについて近浦監督は「藤竜也と森山未來を同じフレームの中で対峙させたかった」と、脚本の段階から2人が脳裏にあったと明かす。サンフランシスコ国際映画祭で“最高賞”を受賞。やっと日本で観ることができる。この話は、ミナミにある老舗の珈琲屋から始まる。“元画家”の男と“働いとらん”34歳の男。テーブルの上にあるのは、オランダの美術館から盗まれたピカソの記事。この状況で、「十億ほど、稼いでみぃひんか」。男たちの服装や姿勢、声、老舗店独特の匂いまで想像させられたところで、この怪しい企みが動き出す。この2人、ピカソの贋作を作り始める。現代の贋作づくりは、科学、光学の最新技術が必要で、彼らはコワイ人から軍資金を調達、さらにもっとコワイ、西太后なみにコワイ、中国のメガコレクターと交渉を始める。真贋を見分けるのもテクノロジー。失敗したら死ぬしかないこの計画は止めることができず…。お金があれば贋作が作れてしまう?真贋は数字で判定?新しいアートサスペンスは多くの不安を残す。海外の映画祭で絶賛! 父・藤竜也、息子・森山未來第5回大藪春彦新人賞受賞作家の長篇デビュー作!公式サイトはコチラtext.田中奈都子97

元のページ  ../index.html#97

このブックを見る