KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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私が眼科医になった頃は「加齢黄斑変性は日本人にはほとんどない病気」と言われていました。ところが遺伝的要素や喫煙のほか、食生活の変化や平均寿命が伸びたことなどが理由で急増するようになりました。若い頃からの生活習慣の見直しが大切です。緑内障の中でも特に日本人に多い開放隅角緑内障のリスクファクターの一つが近視です。20年前、40歳以上の人の緑内障有病率は約5パーセントといわれていましたが、2019年には約8パーセントまで増加しています。スマホやゲームなど子どもの頃から近視になる要素が多く、今後さらに有病率が高くなるのではないでしょうか。近視は網膜剥離の原因にもなります。放置することなく、また学童期には一日に2時間程度は外で過ごすようにしてほしいと思います。中村先生にしつもんQ.眼科を専門にされたのはなぜですか。A.眼科が面白いと思った理由は、内科的なことと外科的なことのどちらもできるというところです。患者さんが来られたらまず診察をして、診断をしたら薬物療法から始めるのか手術をするのかなど、眼科医自身が決める方針に沿って治療を進めます。また、治せる病気が多く、治療によって改善した結果を患者さん自身がダイレクトに自覚できるので喜んでもらえます。若いころは、手術をして「目が見えるようになった!」というところに神秘的なイメージを持って憧れていたかな…中学生のころに見たチャップリンの映画「街の灯」に感化されていたのかもしれません(笑)。Q.病院で患者さんに接するにあたって、また大学で学生さんに接するにあたって心掛けておられることは?A.大学病院には複雑な背景を持った重症の患者さんが来られます。眼のことをきちんと診ることはもちろん大事ですが、背後に潜んでいる疾患や生活習慣を見逃さないようにしなければなりません。眼の症状を引き起こす全身疾患がないかを常に注意して診察しています。また私が専門としている緑内障の治療は現状維持が精いっぱいということもあり、残された視機能で満足できる生活を送ってもらえるように情報提供や社会的支援まで念頭に置くようにしています。大学では基本的には双方向の講義を取り入れています。「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル教授のように…と言っても哲学と違って医学ではそこまでは難しいのですが、できるだけ近付けようと心掛けています。Q.先生ご自身の健康法やリフレッシュ法は?A.ボイストレーニングです。仕事を始めてからは忙しくて続けられなくなってしまいましたが、実は学生時代はピッコロ演劇学校に通っていました。教授になって体の衰えも感じる年齢になったころ、演劇を続けている同期生に会う機会がありました。見るからに健康そうで、私は「これではいかん!」とボイストレーニングを再開し、その一環として月に二度ほどカラオケで1時間ひたすら歌い続けています。またピッコロ時代に習った狂言も本格的に指導を受けるようになりました。腹式呼吸で声を出してインナーマッスルが鍛えられるカラオケと狂言は明らかに体にいいですよ。体の調子がすごく良くなって、外来で午後3時ごろになると疲れて頭が痛くて声も出にくくなっていたのが、今では何時になっても大丈夫!元気です。筋肉は嘘をつきません。Q.中村先生はなぜ医学の道を志されたのですか。A.子どものころ病気で病院に通うことがあり、病気を治しているドクターを見て何となく関心を持っていたと思います。中高生のころは教科の中で生物が好きで、幼児体験と好きな学問を考え合わせて医学の道を選ぶことになりました。93

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