KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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白内障は眼のレンズの部分「水晶体」が濁る病気で人工のレンズと置き換える手術で回復します。緑内障は成り立ちが全く違う病気です。眼に写った情報を脳に運ぶケーブル「視神経」が少しずつ断線して情報が脳にきちんと伝わらなくなると視野が欠け始め、完全に断線してしまうと失明に至ります。さまざまな要素が絡まっていて、大きく2つのタイプに分かれます。常に眼の中を循環している水は、虹彩の裏から作られ、瞳孔を通過し、隅角(角膜と虹彩)のフィルターを通って排出され血管へと吸収されます。ところが加齢により分厚くなった水晶体が虹彩を圧迫すると、せり上がり排水溝を塞いでしまいます。水が外に出られなくなると眼圧が上がり視神経を圧迫したり、断線したりします。これが「閉塞隅角緑内障」で、発症当初であれば水晶体を人工レンズと置き換える手術で治療は可能です。もう一つは隅角のフィルター機能が衰えスムーズな排水ができなくなる「開放隅角緑内障」です。大半の場合、眼圧は上がらないにもかかわらず視神経が体質的に弱いため断線が起きてしまう「正常眼圧緑内障」です。日本人の緑内障患者さんの8割程度がこのケースだといわれ、点眼薬で眼圧を現状よりさらに下げて視神経の傷みが進まないようにするのが現段階でエビデンスのある唯一の治療法です。しかし眼圧を下げる治療には限界があり、また下げても進行するケースもあります。神大病院では今、緑内障の基礎研究を踏まえた上で新たな薬の特定臨床研究を始めようとしています。91

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