KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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ROLLSROYCEPHANTOMⅡ映  画:『黄色いロールス・ロイス』 1964年イギリス 122分登場車両:ロールス・ロイス・ファントムⅡandcarsMovie 時代背景は第二次世界大戦前の1930年代、1931年式の黄色いロールス・ロイス・ファントムⅡが3名のオーナーのドラマを乗せて走る。1話目の舞台はロンドン、チャールズ侯爵(レックス・ハリソン)は、結婚10周年記念に妻エロイーズ(ジャンヌ・モロー)にファントムⅡをプレゼントする。アスコット競馬場で年に1度開催されるゴールドカップ、結婚記念日(6月10日)と名付けた愛馬が今年のゴールドカップの1番人気だ。大切なレースを前に隣にいるはずの妻の姿が見当たらない。侯爵は不審に思いレースを見ずに妻を探すと、関係者駐車場に停めてあるファントムⅡの後部座席で妻と部下の密会を目撃するのだった。ゴールドカップで見事に愛馬が優勝を果たし周囲から祝福を受けるが侯爵の気持ちは複雑である。世間体を保つためにエロイーズと離婚はしないがファントムⅡは販売店に返されるのだった。2話目はイタリアに渡ったファントムⅡ、マフィアの大物パオロ(ジョージ・C・スコット)と婚約者メイ(シャーリー・マクレーン)が旅行でイタリアを訪れる。ディーラーに展示してあるファントムⅡが気に入ったメイのためにパオロは購入してイタリアの名所を巡る。途中、街頭カメラマンのステファーノ(アラン・ドロン)と出会い、メイはステファーノと恋に落ちる。二人の関係が夫パオロの知るところになると二人とも死を免れない。パオロの右腕であるジョーイが2人を説得して別れさせるのだった。3話目は、ユーゴスラビアの国境に近いイタリア北東部のトリステという町で、少々くたびれた様子のファントムⅡが整備工場に入庫していた。ヨーロッパ旅行中のアメリカの富豪ゲルダ夫人(イングリッド・バーグマン)はファントムⅡを購入してユーゴスラビアの国王の拝謁に向かう。途中ドイツとの戦いの為に祖国に戻りたいダビッチ(オマル・シャリーフ)をトランクにかくまって国境を超えた。ダビッチはユーゴスラビアの解放軍のリーダーである。ダビッチの故郷に近いホテルでドイツ軍の空襲に遭ったゲルダは、危険をものともせずにファントムⅡで空襲により荒れた村の中を走り、解放軍の足となり、怪我人や多くの村人を助ける。ゲルダとダビッチは互いに好意を抱くのだが、ダビッチはアメリカでこの惨事を伝えてほしいと言う。その願いを聞き入れたゲルダはファントムⅡと共にアメリカに渡るのだった。汚れ傷つきはしたが気品を失わないファントムⅡ、アメリカでもゲルダ夫人に仕えて走る姿が目に浮かぶ、そして後部座席に様々な人間模様を刻んでいくのだろう。豪華キャストの競演、それぞれの演技を見逃せない。Dax101@shutterstockロールス・ロイス・ファントムⅡ 1931年式1929年から1935年まで製造された。ファントムIIはロイス(ロールス・ロイスの生みの親)が開発を手がけた最後のモデルとして知られる。また、第2次世界大戦前のロールス・ロイスの最高傑作と言われる。全長5m58cm、車重2.5tの優雅で堂々たる車体を、直列6気筒OHV、7,600㏄ のエンジンで悠然と走らせる。ベース車両の価格が1,900スターリングポンド(今の日本円に換算すると約4,000万円)と超高級車であった。生産台数は1,675台、1936年にはファントムⅢ(V型12気筒エンジンを搭載)にバトンを渡した。世界に3台しか存在しない特別仕様のファントムⅡはジーライオンミュージアムでご覧いただけます。※画像車両は1934年製文・株式会社マースト  代表取締役社長 湊 善行[ミュージアムQRコード]8

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