KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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図2ときは、口をすぼめて、つまりいったん空気を圧縮してから、「ふぅ」と吹きかけてみてください。どうですか、さきほどより温度が下がったでしょう。これは、口の中で圧縮された空気が、口から大気中に放出されるときに膨張するために、温度が下がるからです。これを僕は「ふぅふぅ(*´Д`)ハァハァの原理」と呼んでいます。みなさんは無意識のうちにこれを行っているか、あるいは、子供のころにお母さんから「口をすぼめて、断熱膨張でラーメンを冷やすのよ」と教えてもらったかも知れません。今回は大部分が横道に逸れてしまいましたが!ここで言いたいことは、「宇宙の物質が持つ全エネルギーが変わらないなら、それが一箇所に集まっていた宇宙初期には、宇宙はとてつもない高温になっていた」ということです。この広大な宇宙が一箇所に集まっていたわけですから、とんでもない「圧縮」です。これを最初に唱えたのはソヴィエト連邦の物理学者であるゲオルギイ=アントナヴィチ=ガモフです。彼はこの超高温の宇宙を「火の玉宇宙」と呼びました。でも言うのは簡単です。宇宙初期にそういう状態であったなんて、誰も見てこれないから、好き勝手言っているだけでは? ところが、ガモフは、今でもその宇宙初期の「証拠」を観測することができると言ったのです。それはいったい何なのか。次回はその「火の玉宇宙の証拠」についてお話しします。PROFILE多田 将 (ただ しょう)1970年、大阪府生まれ。京都大学理学研究科博士課程修了。理学博士。京都大学化学研究所非常勤講師を経て、現在、高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所、准教授。加速器を用いたニュートリノの研究を行う。著書に『すごい実験 高校生にもわかる素粒子物理の最前線』『すごい宇宙講義』『宇宙のはじまり』『ミリタリーテクノロジーの物理学〈核兵器〉』『ニュートリノ もっとも身近で、もっとも謎の物質』(すべてイースト・プレス)がある。64

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