KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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図1わらなくとも、体積が大きくなる、つまり密度が低くなるので、温度は下がります。これを断熱膨張と言います。この状態で冷媒の入った配管部分を室内の空気に触れさせてやると、室内の空気の温度は下がり、冷たい空気となって噴き出すのです(図2)。実はこれと同じことを、みなさん自身が自然と行っているときがあります。たとえば熱いラーメンを食べるときです。それを冷ましたいときは、口をすぼめて息を吹きかけますよね。一方で、冷え切った手を温めるときにも息を吹きかけるでしょう。冷やすときにも温めるときにも息を吹きかけるという、一見矛盾したことをしているようですが、実はこれは口の形にその秘密があります。人間の体温は高いので、そのまま息を吹きかけると温かい空気が出てきます。これが手を温めるときです。みなさんも本稿を読みながら手に「はぁ」と息を吹きかけてみてください。温かいでしょう? 次に、ラーメンを冷やすときと同様、このコンがどうやって部屋の空気を冷却しているかご存じでしょうか。熱を発生させるほうなら、燃料を燃やしたり、電熱線に電流を流したり、様々な手があります。しかし、熱を奪うのはそう簡単ではありません。まず、エアコンは、室内機と室外機がセットになっています。そして、その中を、冷媒と呼ばれる気体が循環しています。最初にエアコンを設置したとき、業者の人が何かの気体を詰めていきますよね。あれが冷媒です。この循環の際に、室外機で冷媒を圧縮します。すると、気体が持っている全エネルギーは変わらないですが、体積が小さくなる、つまり密度が高くなるので、温度は上がります。これを断熱圧縮と言います。冷媒温度は外気温より高くなりますから、その熱は外気に放出されます。それから室内機に送られますが、室内機では冷媒を膨張させます。するとやはり全エネルギーは変ていると思ってください。矢印の長さが運動エネルギーの高さを示しています。上と下では、分子の数も矢印の長さもすべて同じです。でも、上のほうがより狭い場所に集まっていますよね。分子が持つ運動エネルギーの総量は同じでも、その密度が上下で異なります。上のほうが密な分、温度が高いのです。子供が狭い場所にたくさん集まっているとそれだけで暑苦しいですもんね。余談ですが、みなさんはエア63

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