KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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前回は、すべての天体が遠ざかっていっているという観測事実から、過去には天体同士の距離がもっと近かった、さらに言えば、宇宙の初期には、すべての物質は一箇所に集まっていた、という話をしました。今回は、そのときにはどんなことが起こるのかを考えてみます。突然ですが、みなさんは「温度とはなにか」と訊かれたら、なんと答えるでしょうか。こんな身近な、ごく当たり前に普段使っている言葉ですら、それがなにかと訊かれれば、答えられない人が意外に多いのではないでしょうか。たとえばわれわれの周りの空気は、おもに窒素分子と酸素分子で構成されていますが、これらは分「子」と名前がついている通り、子供のようにじっとしていられないものなのです。結構な高速で飛び回っています。みなさんは、幼稚園でも小学校でもいいですが、子供がいっぱい集まった場所を見たことがありますでしょうか。よく見ると、その元気さにも個人差があることがわかります。停まると死ぬのではないかと思えるほどに動き回っている子供もいれば、ややぐったりしている子供もいます。分子も同じで、速度の速い(運動エネルギーが高い)ものもいれば、遅い(運動エネルギーが低い)ものもいます。これらの分子の運動エネルギーの平均値が温度です。いえ、正確には、分子の運動エネルギーの平均値の密度が温度です。密度? 図1をご覧ください。丸が分子、矢印が運動エネルギーを表わし多田先生!素粒子物理学者の   宇宙物理学教室教えて 連載〜第13回〜 火の玉宇宙自然界で最も大きな存在が宇宙、そして最も小さな存在が素粒子と考えられている。素粒子を研究することで、宇宙のはじまり、人間の存在を解明する︱︱ 日本の誇りをかけて、その最前線で日々研究に打ち込む素粒子物理学者・多田将先生。この連載で謎に包まれた宇宙について多田先生に教えていただきます。さあ、授業のはじまりです!62

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