なくなった。侵略や紛争、差別や分断が止まず、世界中が世知辛くなったようで、映画人たちも金儲けのことしか考えてないのだろう。昔の『ピンクパンサー』シリーズのような呑気で楽しかったコメディー映画も消えて久しい。さて、話を戻すが、1990年の夏に観た、とりわけ印象に残っている愉しいフランス映画がある。米ソの冷戦が終わり、ベルリンの壁も壊れて東西ドイツが一つになったと喜んでいたら、 フセイン大統領のイラクがクウェー最近は、映画館になかなか足が向かなくなった。スクリーンが一つあるのが普通だった名画座が消えて、シネマコンプレックスという複合型が当たり前になった所為もある。お客が寄りつきそうな、“作品”というより“商品”を並べてワゴンセールしているようで、ボクの目当ての映画はそこには先ず見つからない。表の看板を見上げて、「おお、今日はこれを見に来たんや」と観る前から心を躍らせる映画にも随分前から出会えていない。大笑いできる洋画も見かけトに侵攻して、今度はペルシア湾岸がキナ臭くなり始めたのだ。テレビで初めて見るフセイン大統領は誰がキャスティングしたのか、まるでB級低予算映画に出てくる独裁者らしい哀れな最期を予感させる顔つきだった。でも、その暴君の姿こそ紛れもない現実だし、また世界が不安に苛まれそうで鬱陶しかった。邦画でボクの気晴らしになる映画はなかった。そんな時に観たのが、『五月のミル』で、それはとても愉快な社会風刺劇だった。時は1968年にパリで起き井筒 和幸映画を かんがえるvol.40PROFILE井筒 和幸1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm映画『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』セルDVD発売中。46
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