KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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Y.I.(Young Investigator)賞受賞者と研究課題太田禎生氏東京大学先端科学技術研究センター 准教授高速・非破壊な光生命解析を人知から解放する Learning Cytometry技術群の開発研究分野で多く使用されている細胞解析装置セルソーターは感度・速度と識別精度の両立に課題を有している。そこで画像が構成される前の電気信号を直接解析して識別するという逆転の発想を軸に、光、流体、電気、AI技術を組み合わせることでコストを削減し、より高速化、高精度化した世界初の画像情報識別型高速セルソーターを実現した。実用化に挑戦し2023年に装置を上市。現在もAI駆動サイトメトリー技術群を次々と開発している。武部貴則氏大阪大学大学院医学系研究科 教授マイ・メディシン実現に向けた戦略的多能性幹細胞研究臓器移植の現場において臓器の絶対的な不足という課題に直面し、幹細胞を培養して自己複製、分化、自己組織化させるオルガノイド研究を基軸として移植の代替手法を目指した。血管を含む多細胞系譜が複雑に構造化されたオルガノイド作製の基盤技術を確立し、致死的な肝疾患治療への応用や隣接器官接続への道筋をつけた。さらに疾患発症と個別化医療につながる遺伝子要素を解明し、スタートアップ会社を立ち上げ一部は臨床試験を実施している。加藤英明氏東京大学先端科学技術研究センター 教授光遺伝学技術の分子基盤解明およびその高度化眼の中で視覚を担うタンパク質であるロドプシンの中でも、イオン輸送型のロドプシンの立体構造を次々と決定し、構造情報に基づき機能解析を行い分子機構の詳細を解明した。また、詳細な構造情報から着想を得て、分野横断的なアプローチを融合し新たなロドプシンを開発した。その成果は研究用の実験ツールだけではなく、網膜変性疾患やうつをはじめとする各種精神疾患、神経疾患の遺伝子治療への昇華が期待される。40

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