KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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を取材したとき。この染五郎抜擢の理由を聞いてみた。「歌舞伎座で演じる彼の声、佇まいを見ていて、彼しかいないと決めたんです」とそのプロデューサーは答えた。この話を染五郎に伝えると、「あのときは、まだ高校生でした。だから等身大で自然に演じることができたんです。今ですか?もう、あの頃のように演じることはできないでしょうね」と笑いながら振り返った。すると幸四郎が、「プロデューサーたちが、染五郎の舞台を見にきてくれたり、出演依頼の思いを込めた手紙を送ってきてくれたり…。熱心に出演を依頼されたんですよ」と当時の状況を教えてくれた。真剣なアニメ製作者たちのラブコールを何度も受けながら、その期待にこたえようと染五郎の出演を親子で快諾したという。そこには、親として子に、「新たな世界へ挑戦してほしい」という思いもあったはずだ。それから3年が経ち、高校生から今、19歳に。身体も自分と同じ身長まで成長し、長男市川 染五郎(いちかわ そめごろう)2005年、東京都出身。十代目松本幸四郎の長男。祖父は二代目松本白鸚。’07年に歌舞伎座「侠客春雨傘」で初お目見え。’09年、歌舞伎座「門出祝寿連獅子」で四代目松本金太郎を名乗り、初舞台を踏む。’18年に歌舞伎座「壽初春大歌舞伎」において「勧進帳」で源義経を勤め、八代目市川染五郎を襲名。’22年6月に「信康」で歌舞伎座初主演。’24年に映画『レジェンド&バタフライ』で、第47回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。24

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