KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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の父、つまり幸四郎の祖父の当たり役を受け継ぎ、1989年から2016年まで28年間にわたって演じ続けてきた。その〝称号〟を8年ぶりに受け継ぐプレッシャーたるや想像に難くない。そう向けると、幸四郎は「もちろんです。鬼平を演じるプレッシャーは、それは大きかったです」と素直に認めたうえで、「それでも私がいつかはやらねばならない役だったのだとも思っています」と語気を強めた。五代目鬼平を託され、長男、染五郎が若き日の鬼平を演じることに対し、「この流れは運命のようにも感じます。そしてそれこそ血なんだと…」と秘めた思いを吐露するように言葉にした。息子として…。いつにない父のプレッシャーを撮影現場で直に肌で感じ取っていたのだろうか。取材中、静かに、だが熱く鬼平を演じることの意義や意気込みを語る父の言葉を隣で聞いていた染五郎は、「〝父の挑戦〟の場に参加できて本当によかった。父の助けになれたらと思って演じました」と自身もプ松本 幸四郎(まつもと こうしろう)1973年、東京都出身。二代目松本白鸚の長男。’78年、父が主演したNHK大河ドラマ『黄金の日日』に子役で出演。翌年3月に歌舞伎座『侠客春雨傘』で三代目松本金太郎を名乗り初舞台。’81年10月に七代目市川染五郎を襲名。古典から新作歌舞伎まで取り組み、二枚目から実悪、色悪、女形まで務める。また、劇団☆新感線の舞台など歌舞伎以外でも幅広く活動し、テレビ・映画の作品にも多数出演。’05年には映画「阿修羅城の瞳」「蟬しぐれ」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞、報知映画賞最優秀主演男優賞、日刊スポーツ映画大賞主演男優賞を受賞。’18年に十代目松本幸四郎を襲名。22

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