KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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いでしょうか。芸術の創造の中核は、インファンテリズム(幼児性)です。芸術が人を惹きつけるのは、この幼児性です。言葉ではありません。一度、考えや言葉から離れる生活をしてみては如何でしょうか。芸術作品は、鑑賞者の言葉を封印する魔力があります。ところが現代は、芸術は語るものであると主張する傾向が言葉を露出しすぎています。さも言葉が一番エライ、人生の目的は言葉人間になること、それが一番エライと思っているのではないでしょうか。子どもはみんな、正直で無垢で素朴です。それ故に純粋です。純粋な心から発している、子どもの言葉には嘘がないのです。そういう意味では、子どもになる生き方が、最も理想ではな横尾忠則現代美術館美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、東京都名誉都民顕彰、日本芸術院会員。著書に小説『ぶるうらんど』(泉鏡花文学賞)、『言葉を離れる』(講談社エッセイ賞)、小説『原郷の森』ほか多数。2023年文化功労者に選ばれる。横尾忠則現代美術館(神戸市灘区)にて『横尾忠則 寒山百得展』開催中。2024年8月25日(日)まで。あります。これは間違いです。素晴らしい芸術作品の前では、自らが言葉を失う経験をしたという人も沢山います。言葉以上の何かがあるのです。それはきっと霊性という存在ではないかと思います。ポスター(デザイン:横尾忠則)19

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