KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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■今村欣史(いまむら・きんじ)一九四三年兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。西宮芸術文化協会会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)ほか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・編集人。「半どんの会」会員。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。いるいる、そんな子。でもかわいくて。一度だけ母を叱った日の小雨鳴るものはみな風鈴になりたがる釣り上げた魚が海を振り返る見ましたねポストの前の合掌を臆病って病気なのかと問う烏ともだちの生る木があったその昔華やいだ街へと帰る見舞客犬もまた遠い目をする川の風コンパスで描かれて月は怒り出す誰が知るみどりのおばさんの孤独あの人のことかな?こう言われてみてあの人の顔が思い浮かぶ。忘れたいところに貼っている付箋訃報欄が好きだとどなたにも言えずやわらかいナイフのような「お大事に」ああ、大病をしたものにはよくわかる。罵られた言葉を辞書で確かめる気付かない 切り離された一輌に深々とお辞儀をすれば草千里された事していただいた事も夢どうだろうか、この多彩な角度からの視線。人間を見る眼が深く鋭い。そして優しい。きっと人生経験が豊富なのだ。そうでないとこのような作品を創ることはできないだろう。そこを新子さんはしっかりと見抜いておられたということ。広く世に知られずとも、いいものはあるのだ。そんな一冊でした。もう一句。エンドロール 鐘が響いているばかり(実寸タテ19㎝ × ヨコ11㎝)101

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