KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年7月号
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今村 欣史書 ・ 六車明峰連載エッセイ/喫茶店の書斎から   『どぎまぎ』極楽の絵もじゅうぶんに恐ろしいわたしのところにはいろんな本や雑誌が送られてくる。忙しくしている時にはつい積読になってしまうが、戴いたものには必ず目を通すことにしている。中に「これは!」と思うのが有るのだ。『どぎまぎ』(小林康浩著・ブイツーソリューション刊・1200円)がそんな一冊だった。川柳句集である。巻末のプロフィールに「33歳で時実新子を知り、川柳を始める」とある。新子さんは句集『有夫恋』で風雲を巻き起こし川柳界の与謝野晶子と称された人。因みにわたしは川柳を作らない。でも川柳が好きなのだ。柳人には詩人とはまたちがった魅力を持つ人が多い。だが小林康浩さんにはこれまでお会いしたことがない。2003年に 週刊朝日「川柳新子座」大賞など数々の受賞歴をお持ちだ。新子さんに認められた実力者なのですね。川柳の世界では知られた人なのだろう。わたしもお名前は存じ上げていた。でも句集は知らなかった。ところがこの句集『どぎまぎ』がいいのだ。門外漢がいうのもおかしいと思うが、多くの人に知ってほしい一冊だ。当節はやりの“おちゃらけ川柳”や“不可解川柳”とは違い、滋味たっぷりの文学性豊かなもの。一句一句に味わい深い世界がある。「数多の没句が鬱然と樹海を形成している」とあとがきにあって、厳選された265句が載っている。全て紹介するというわけにはいかないので、特にわたしのアンテナに響いたいくつかを。落ちぶれた鬼なら追ってみたくなるこんなに自分の弱点をさらけ出していいのですか?ま、そこが魅力か。押したドア軽過ぎて乱入となる誠実で百万人に嫌われる  セレモニーの鳩そそくさと帰りゆく村人が息を殺している帰郷野辺を行く花嫁の手に脈がない帰り道さてこんな道だったっけたくさんの駅を飛ばして幸せか照れるなあ低額所得者だなんて客観視している自分をまた見ているような視線。複雑な心境をこの一行で。  花子ちゃんは花が嫌いでイジワルで100

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