査を受ける義務があり、厳しい検査基準をクリアしないと乗務できませんでしたが、すべて一度の審査で合格しました。─視力などの検査ですか。山形 それはもちろんですが、例えば日常会話は問題ないけれどある一定の周波数帯が聞こえない場合は不合格になります。また、脳波や心電図を測定し波長の異状などが出ると乗れなくなる場合もあります。高血圧を薬で抑えている場合も不可ですね。─健康の秘訣は。山形 よく外に出たり、テニスをしたりしていましたね。午後遅くの乗務時は午前中に近所のテニススクールに通ってから出社した事もありました。家内に言わせると「好きなことしかしていないからストレスが溜まらない」だから元気なの!(笑)でも、パイロットの生活はあまり健康的ではありません。乗務は早朝もあれば夜遅い時もあり、長距離国際線ですと徹夜や時差もあります。食事も、国内線は弁当が出るのですが、衛生面に配慮してか冷めた揚げ物も多く、42年間に1万食以上食べました。食べる時間帯も不規則で、5分から10分で食べていました。又、自然の放射線を受けることも、特に北回りルートは線量が多く、ニューヨーク線を月2回半飛行すると、年間の被曝量は当時の原子力発電所従事者の約5倍だと言われていました。─到着してから出発まではどんな感じですか。山形 国内線ですと、例えばB767の折り返し時間は40分程で、その間にお客様の乗り降り、フライト準備や点検がありほとんど休む暇はなかったですね。長距離国際線ですと2泊4日勤務でしたから、合間に1日自由な日ができ、いろいろな街を訪ねることはできました。独特なアナウンスの意義─ユニークなアナウンスはサービスのためですか。山形 ホスピタリティでもありますが、一番の目的はパニックコントロールです。当時のB747ジャンボジェットは満席で569人でしたが、フライト中にそのうち1人でも倒れたら残りの568人を道連れにして引き返すか、ダイバート(目的地外着陸)になります。私が乗務していた頃、全日空では年間約35万便飛んでいましたが、お客様の都合による引き返し等が50便くらいありました。お客様が「怖い」と思うことで体の不調をきたすことも考えられるので、そういう方を安心させるために離陸前にアナウンスしました。─パニックコントロール、安全のためなのですね。山形 日本語と英語と、拙いですけれど現地語でアナウンスす97
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