KOBECCO(月刊神戸っ子2024年6月号
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『灘五郷酒所』ではお酒と料理のペアリングを楽しめるのも大きな特徴だ。坂野さんの相棒、中野佳子さんは西宮郷の「白鹿」、辰馬本家酒造(株)の出身。マーケターとして活躍するなか、イベントで知り合った坂野さんを手伝うようになり、ARIGATO-CHANの一員となった。「旬」「発酵」「相性」「地元」をテーマにしたお店のメニューも中野さんが考案し、調理する。硬水で仕込まれた灘の酒は「男酒」と称され、辛口で力強い味わい。「味がしっかりしているため、インド料理や中華料理など、パンチの効いた料理にも負けないし、組み合わせることで全く違った味わいになる。色々な味変を楽しんでもらえるように、お酒との相性を考え抜いた料理を提供します」と中野さん。灘の神戸市中央卸売市場に自ら買付に出向き、近海物の魚と地元の酒のペアリングを提案したり、地元の食材店や飲食店とコラボレーションしたり、大忙しの日々を過ごす。灘の酒はかつて江戸で飲まれる酒の約8割を占め、今なお日本一の生産量を誇る。江戸という全国から色々な人が集まる場所で、どんな料理にも合う灘の酒は食事を引き立て、食事と共に楽しむ、食中酒として広まっていった。「例えば唐揚げにはビールが一番と思われているが、実は日本酒にも合う。でも中身のない提案ではその時、刺さってもすぐに記憶から消えてしまう。なぜ、合うのか、背景や風土、素材に意味があるから、合うんだよときちんと説明することで、世間に認められ、浸透していくと思います」と力説する。食とお酒の組み合わせ江戸から続くペアリングARIGATO-CHANの中野佳子さん人気の「灘五郷酒所セット(3,000円・チケット15枚)」は日替わりの肴3種類と、それぞれにおすすめの灘五郷の酒5種類がセットに。取材日に出してもらった肴の一つ、神戸西区産の小松菜&ツナをベースにしたトンナートソースは、合わせるお酒によって小松菜の旨味や甘味を強く感じたり、ツナの脂がさっぱりと洗い流されたり。お酒、酒肴、お酒…と口内調理の余韻が楽しくて、グラスを上げ下げする手が止まらない!80

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