KOBECCO(月刊神戸っ子2024年6月号
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「灘五郷酒所」を運営する坂野雅さんは以前、東京の広告代理店に勤めていた。転勤で10年ぶりに戻った神戸を観光客目線で改めて見ると「神戸の魅力がうまく発信できていないように感じた」。その一つが神戸ポートタワー。東京では展望良好なビルでは立地を活かしたパーティが開催されていた。神戸でも!とポートタワーの展望フロアでイベントを開催。その時に見上げたポートタワーが水のボトルに見えたという。そこでタワー型のボトルに神戸が誇る布引の水を詰めた『NUNOBIKI NO MIZU』を企画、販売。六甲山の花崗岩層に濾過されたミネラル豊かな水は土壌を潤し、海へ辿り着くまでに神戸に様々な恩恵を与えている。腐りにくいことから神戸に寄港する外国船の乗組員達にも称賛されていた。「神戸には語るべきストーリーがまだまだある」。神戸らしいボトルに物語や神戸愛を詰めて発信する事業から、ARIGATO-CHANの歴史が始まった。灘五郷に関わる転機となったのは広島・西条の酒まつりに参加したこと。「広島の酒蔵の人に『灘も日本酒をもっと盛り上げなあかん』と言われました」。そうして坂野さんはポートタワーでの酒イベント「KOBE SAKE TOWER」や「SAKE TARULOUNGE」の運営など、灘五郷のPRに携わるようになる。六甲山のミネラルに海のミネラルが交わる奇跡の「宮水」、酒米「山田錦」、寒風「六甲おろし」と、兵庫の恵まれた自然条件が合わさって初めて力強い男酒、灘の酒となる。しかしそんな素晴らしい環境を知る人は少ない。山田錦の田園見学、六甲の風を感じ、宮水を見て、酒蔵を巡り、神戸ビーフと日本酒のペアリングまで、盛り沢山のローカルツーリズムを企画するが、視察に訪れた文化庁の担当者から「灘五郷のきちんとした情報発信拠点が必要」と助言される。居合わせた剣菱酒造の白樫政孝社長から「“使っていない酒蔵があるから役立ててほしい”と言われて」、『灘五郷酒所』が2022年4月に誕生する。(株)ARIGATO-CHANの坂野雅さん  「PORT OF KOBE」のポスター。神戸ビーフやジャズ、日本酒など、神戸は物語に恵まれていることをポートタワーのビジュアルで表現『NUNOBIKI NO MIZU』”布引の水“から始まる物語日本一の灘がやらないのか77

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