が新田次郎文学賞と舟橋聖一文学賞をダブル受賞。「この町から世に出た偉い先生に逃げられたらあかん。玉岡さんは戒名を持っておられるし、お家のお墓も十輪寺にあるし…(笑)」と文学碑建立を打診した。「私には過分」と辞退した玉岡さんだったが、西田さんの思いを理解し「お寺に人々が集うきっかけになれば」と快諾するに至った。昨年、西田さんは骨折して入院療養を余儀なくされたが周りも驚くほどの回復力で退院し、4月20日の除幕式を迎えることができた。木版画で名を知られるが療養後は力及ばず、玉岡さんとの合作で一枚一枚、心を込めて帆船を手描きした色紙を参加者に配り、喜びと感謝の意を伝えた。玉岡さんは「身に余るお話を頂きプレッシャーに押しつぶされそうでしたが、今日お越しいただいた皆様から勇気を頂き、これからも良い作品を書き続けようと心新たにしております。こんなに立派な碑を建てていただき本当にありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。『帆神―北前船を馳せた男・工楽松右衛門―』著・玉岡かおる新潮文庫 文庫 1,045円(税込)故郷・高砂を追われるように出た牛頭丸(後の松右衛門)は兵庫津で瀬戸内海の島々を結ぶ渡海船で働き、頭角を現す。さらに高みを目指し外洋で交易に従事する弁財船に乗り込んだ松右衛門は独自の航法を編み出し、やがて沖船頭まで出世する。そこで目を付けたのが、破れやすい「帆」だった。研究に没頭し、遂に「松右衛門帆」を開発した。航海の安全と効率を高めるこの商品を私利私欲にはこだわらず公益のために広く世に出し、その功績により江戸幕府から「工楽」の姓を与えられる。海運を一変させた革命児の生涯とその人生にさまざまな形で関わった女性たちを描いた長編歴史小説。43
元のページ ../index.html#43