KOBECCO(月刊神戸っ子2024年6月号
36/148

す。私が赤ん坊の頃、そのお客さんが、眼鏡を買ってくれたからお前のミルクが買えたのだと。お客さんあっての自分たちだということです。八田 お客さんを一人の人間として尊重されているのですね。私も恩師に「患者さんの気持ちに添って治療していかないといけない」と教わりました。医師だからといって決して上から目線でなく、患者さんと対等の立場で、お互いに一人の人間と人間が対話していくことが大事だと思うんですよね。反対に、卑屈になってもいけない。何年か前から病院でも「患者様」と呼ぶところがあるのですけれど、私はそれが嫌いなんです。同じ立場だから「患者さん」だろうと。私はそういう方針です。久利 先生と患者さんの距離を近づけるという意味もあるのでしょうね。資格取得はゴールじゃない─マイスター大学堂は、ドイツ公認のマイスターがいるお店の先駆けですね。久利 私が小さい頃に父親が「ドイツでは兄弟が2人いたら、1人は家業をコツコツやり、もう1人はよその技術ややり方を学んで帰ってくるんだ」と、たぶんマイスター制度のことを言っていたんでしょう。─弟の七男さんは1979年に日本人初のマイスターになりました。久利 当時は高度経済成長の最中で、出店競争が激しい時代だったんですよ。でもそれは違うのではないかと思って、広げるのではなく穴を深く掘っていこうと。─ドイツでマイスターになるには10年かかるそうですが。久利 アメリカにもオプトメトリストという制度があって、これ一般社団法人 兵庫県医師会長 八田 昌樹さん36

元のページ  ../index.html#36

このブックを見る