KOBECCO(月刊神戸っ子2024年6月号
23/148

場でAD(アシスタントディレクター)だった青山監督から出演を依頼されたんです」「自分の映画監督デビュー作には絶対に談春さんに出てほしい」と直々に請われての出演だった。この映画公開前に主人公を演じた佐々木さんを取材したとき。「談春さんの刑事役が本当に凄かった。この映画のキーとなる重要な役で難しかったはず」と興奮気味に話す姿が強く印象に残った。新人監督から重鎮俳優までが、現場で頼りにする、今や映画やドラマにとって欠かせない懐刀のような俳優の一人だ。落語界の未来大阪の天満天神繁盛亭、神戸の喜楽館など落語の定席が相次いで創設されるなど、「近年かつてない落語の盛り上がり、人気を感じますね」と向けると、「これまで、落語の歴史を振り返ってみても、その人気が沸点に達したことはないんですよ」とやんわりと、だが、毅然と否定された。一方で、「過去400年にわたって落語の種火が消えたこともありません。落語には、人間にとって普遍的なものが込められているからだと思います」と続けた。この、「火種は絶対に消さない」という覚悟で、全国各地の高座へ上がり続けた結果、「チケットが最も手に入らない落語家」と言われてきた。この言葉の由来を聞くと「実は新聞の取材のときに私が自分でそう言ったからですよ。今思えば恥ずかしいですが…」と笑うが、実際、数千人を収容できる日本各地の大会場を満員にしてきた実績がこの言葉を証明する。撮影・服部プロセス23

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る