KOBECCO(月刊神戸っ子2024年6月号
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ようです。2019年から横尾さんの中に居続けた寒山と拾得は、満足したのでしょうか。ようやく明るく神々しい世界へ戻っていくかのようです」と語っています。そうです、このような見方でいいのです。学芸員にしては、美術史的な文脈で小野さんは見ていません。絵は、描く方も見る方も自ているのです。さて、この『寒山百得』の最後に描いた、右頁の絵を見てください。この展覧会をキュレーションした小野尚子さんは、最後の作品に対して、「ここに至って寒山拾得の姿は、もはやぼんやりとして、顔の判別もつかない影のようになっており、まるで背景の黄色に溶け込んでいくかの横尾忠則現代美術館美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、東京都名誉都民顕彰、日本芸術院会員。著書に小説『ぶるうらんど』(泉鏡花文学賞)、『言葉を離れる』(講談社エッセイ賞)、小説『原郷の森』ほか多数。2023年文化功労者に選ばれる。横尾忠則現代美術館(神戸市灘区)にて『横尾忠則 寒山百得』展開催中。2024年8月25日(日)まで。由で、勝手に見ていいのです。僕の今回の『寒山百得』展を美術史的文脈で見ると理解できません。ある意味で、学芸員の知性に対する反逆です。頭から「知」を廃して、空っぽになって見てください。そうすると、見えないものが見えてくるかも知れません。《2022-06-19》2022年 作家蔵19

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