KOBECCO(月刊神戸っ子2024年6月号
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―ロボット支援手術が一気に増えているのはなぜですか。2018年から消化器の領域でもロボット支援手術が保険収載され、現在は食道・胃・大腸と全ての消化管で保険適用の対象になり、次第に件数が増えてきました。―腹腔鏡・胸腔鏡手術からロボット支援に移行するメリットは?いずれも出血が少なく輸血の必要がほとんどない手術で、ロボット支援導入で出血量はほんのわずかにまで減少しています。感染による膿瘍形成、うまくつながらない縫合不全、術後に発症する肺炎などといった合併症が少なくなっています。先進医療で行われたロボット支援胃切除術の合併症率は、腹腔鏡手術よりもさらに低い結果でした︵Uyama I, et al., Gastric Cancer 2019︶。安全に精密な手術ができることが患者さんにとってロボット支援手術の大きなメリットです。―ロボットのどんな点が優れているのでしょうか。腹腔鏡鉗子の動きは直線的で〝つかむ〟作業が中心ですが、ロボットは手首の動きが加わり物理学的自由度が高まった結果、細かい作業が可能になりました。人間の手のような生理的な震えがなく、狙った箇所を確実に捉えることができます。カメラも震えがなく、三次元で映し出される画面にブレがありません。術者は自分の両目で見ているような自然な感覚です。ただし現段階では様々な器具が腹腔鏡・胸腔鏡手術に比べると少ないので、今後の開発に期待するところです。―さらに安全で確実なロボット支援手術を行うためのコンピュータ支援手術とは?コンピュータが持つ技術を使い三次元的空間認識を生かして、人間の目をより見えやすく、手回、消化器内科、腫瘍内科、放射線科、食道胃腸外科合同でカンファレンスを行い、治療の組み合わせや順序など患者さん一人一人にとって最良な方法を話し合います。例えば、がんが大きくなり転移している患者さんの場合、まず化学療法や放射線治療でがんをある程度抑えてから手術に進むので、創が小さく体に優しい手術が可能なのです。―消化管の領域では開腹手術はゼロになるのでしょうか。進行胃がんの開腹手術と腹腔鏡手術を比較すると術後5年間にわたって再発はほとんど差がないことが分かっています。腹腔鏡手術やロボット支援手術は翌日からベッドから起き上がって歩くこともでき、1〜2週間で退院が可能です。しかし、がんの進行状況によって胃がん、大腸がんでは1年に数件程度の開腹手術が神大病院でも行われており、今後もゼロにはならないと思います。110

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