KOBECCO(月刊神戸っ子2024年6月号
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Vol.063000人の子どもを家庭に迎えた里親のドーンさん愛の手運動は親に育てられない子どもたちに、里親・養親を求める運動です。募金箱の設置にご協力いただける方は協会にご連絡ください。公益社団法人 家庭養護促進協会 神戸事務所神戸市中央区橘通3-4-1 神戸市総合福祉センター2FTEL.078-341-5046 https://ainote-kobe.orgE-MAIL:ainote@kjd.biglobe.ne.jpアメリカには日本人では発想のできない事をする里親がいます。シアトル市で里親をしている看護師のドーン・イングリッシュさんは、私が出会った30年ほど前に3000人を超える子どもを家庭に迎えていました。「レシービングホーム」といって、1ヶ月以内の緊急保護の必要な子どもを主に預かるのです。日本で言えば一時保護専門の里親です。その中には病気や障がいを持つ子どもが多く、エイズウイルスに感染した子どももいます。私が家庭を訪問したとき、アントニアというインディアンの4歳の子どもを養育していました。アントニアはエイズウイルスに母子感染し、8歳になったときエイズが発症して亡くなるのですが、彼女の死後再訪するとリビングにアントニアのいろんな写真が大きな模造紙いっぱいに貼られていました。彼女がどれだけこの里親家庭で他の里子と共に愛されて暮らしたかがよく伝わってきました。私たちはドーンさんを神戸に招いて講演会や里親との交流を企画し、2度神戸に来ていただきました。その時にエイズウイルスに感染して2歳で亡くなった里子のケイティの話をドーンさんがされ、実話を聞いた神戸の一人の編集者が大変感動し、「ドーンさんのいえ」という絵本ができました。なぜ重い障がいや、病気、エイズウイルスに感染した子どもたちを病院や施設ではなく、里親家庭で育てようとするのかというと、子どもが生きるためには「QOL(生活の質、人生の質)」が欠かせないと言うことです。重いハンディを持っていても、いや、持っているからこそ、ひとりの人間としての尊厳が尊重され、より愛されて育つ環境、つまり地域で普通の、当たり前の日常の暮らしができる家庭が必要と考えるのです。ドーンさんは「子どもが生きていくために苦しみや悲しみを共に分かち合ってくれるおとなの存在が必要」と言い、それを「魂のふれあい」と説明してくれました。ドーンさんは80歳を超えた今もシアトルで里親をしているそうです。出会いと学びの旅から公益社団法人家庭養護促進協会事務局長橋本 明107

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