KOBECCO(月刊神戸っ子)2024年5月号
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が進み、両親共に仕事をすることが当たり前になって、女性問題への理解が少しずつ改善されて…。そういう流れを経て、ちゃんと社会は変わってきてるんだな、と感じました。高校卒業後は東京外国語大学、その後同大学院に進学し、就職人気ランキング上位のテレビ局に入社されました。「映画を作りたい!」と思っていたんです。でも日テレに入ったものの、希望していた映画からほど遠い報道局に配属されて、記者として当時は皆さんがそうだったように、バリバリ仕事しました。カイロ支局長として赴任していた5年間は日本人1人という環境で、そこで私は、これまでになく考える時間をもつことができました。「女性」として生きたい。完全な女性にはなれないけれど、「トランスジェンダー女性」として生きようという決心をしたのはこの頃です。トランスジェンダーとは?「出生時にあてがわれた性とは違う性を志向し実践している人」と、私は考えています。人それぞれ捉え方が違う、難しい言葉です。マイノリティへの理解は近年だいぶ進んできましたけど、問題はまだまだありますよね。“普通”からはみ出ると、“へんな人”になる。同質化圧力というのはなかなかなくならない。そういう意味では、長田高校の生徒たちは、私のことを “普通” に受け入れていました。「質問がある人は控え室にどうぞ」とアナウンスしたところ、男女問わず多くの生徒たちが、それぞれの質問をもって話にきてくれました。Z世代のいいところですね。彼らは生まれながらに情報が多い。多様性を理解するうえではいい時代です。上の世代だとそうもいかない。それは生きてきた時代も社会情勢も違うから。自覚の有無に関わらず、感じ方、考え方は時代そのものを映し込むものだと思います。LGBTQからさらにLGBTQQIAA……。性のあり方も多様だと知られるようになりました。そういう概念があると知っておくことで、人を傷つけることは減ると思います。もしかしたら、悩んでいる人が身近にいるかもしれません。発達障害について考えてみてほしいんです。私が子どもの頃は、そんな言葉知らなくて、学校生活のルールからはみ出ると、“へんな人” って言われました。でも今は研究が進んで、ADHDとかLDとか特性がわかってきて、広く理解されるようになりましたよね。それは優しさだと考えられませんか。だから私は、知見を深めることはポジティブなことだと思います。 本の中でもマイノリティの問題に触れています。社会に物事を発信する仕事に就いているので…。海外はマイノリティがはっきりしていますが、日本では見えにくいですよね。でも苦しんでいる人は、海外と同じようにいます。例えば、日本って、女性のマイノリティ性が1番わかりやすく不条理。これは世界から見ても、早急に、ポジティブに変わらなければいけないところだと思いま79

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