合って観ていたんだなと思う。これを観た動機は憶えている。『イージー・ライダー』(70年)で酔いどれ弁護士を演じ、高校二年のボクに、FREEDOMは法の下のLⅠBERTYとは違い、「自由という権利」のことだと教えてくれたジャック・ニコルソンが宿敵の蝙蝠男と戦うジョーカー役で出たからだ。彼はあらゆる役をこなす怪優だった。日本にこの頃、どんな怪優がいたのか。すぐには思いつかない。ボクが思う怪優とは善人悪人を問わず、生きることの哀しみを大学ノートの表紙に“1990年1月~”と書いた映画日誌を読み返している。メモに “ベルリンに行きたい。壁は破壊。ソ連はどうなる?共産党は終わりか”とある。冷戦の終わりと平和を実感した年だった。続けて、“『バットマン』(89年)は愉しい”と。年が明けて最初に見たのがこれとは笑ってしまった。さらに記してあった。 “主演のマイケル・キートンは冴えない。少年の時に両親を殺された悲しさがない”と厳しい。でも、どんな映画でも真面目に向き表現できる者だ。ジャックはそれを体現する映画人だった。刑務所の重労働から逃れようと詐病で入院した精神病院で反抗ばかりして騒動を起こすチンピラを演じた『カッコーの巣の上で』(76年)もテーマは人間の尊厳と「自由」だった。自由に生きたいのにどうしてそうならないんだよと彼はいつもスクリーンから訴えていた。 “この俳優はやる奴だ。『チャイナタウン』(75年)の続篇はないのか”と記してある。そう思っていたら本当に、その後、『黄昏のチャイナタウン』井筒 和幸映画を かんがえるvol.38PROFILE井筒 和幸1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm映画『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』セルDVD発売中。50
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